地中海,フランス,アンティーブ,antibes
歴史に彩られた美食の港町
Antibes
アンティーブ
(フランス)♦♦

人のリゾートタウン、という表現が似合う港町がアンティーブだ。
 しかしここはリゾート地ではなく、あくまでも市民が生活する都市である。古代ギリシアの時代から続く歴史ある港町と別荘地やマリーナを備えた高級リゾートとが調和した、珍しい町である。
 庶民には高嶺の花の郊外の別荘・ホテル地区はさておき、旧市街だけでも十分に楽しめる気軽さが町の魅力といえる。
 円形のヴォーバン港を取り囲んで、カレ砦に相対するように旧市街の丘がある。旧市街側の中心は、海に面して古代のアクロポリス跡に建つグリマルディ城だ。
 現モナコ公国王の同家は、17世紀の建設当時権勢を誇り、ここに城砦を建てたのだが、一時期アトリエとして使用したピカソにちなんで、ピカソ美術館となっている。
 その下を通り、はるか先のアンティーブ岬で海岸線は高級別荘街へと続く、海沿いのプロムナードだ。
 グリマルディ城のすぐ裏の地区は、中世の街がそのまま残る、路地や市場がある人間味のある街区となっており、フラっと歩き回るだけでも楽しくなる。

 アンティーブは、知る人ぞ知るグルメの町だ。ニースやサントロペのように一元さんの旅行者が少なく、市民や定期的に訪れるバカンス客が中心なので、料理の質が高く、その割りに値段はまっとうだ。
 嗜好を凝らした三ツ星料理を出す店はなく、ここのレストランは適度にお洒落ですごくうまく、あくまでも実質勝負だ。良い店をつかまえれば、30〜50ユーロでびっくりするほどおいしい料理に出合えるだろう。
 ぜひ、本場のスプ・ド・ポワソン(soup de poisson─魚の出汁がぎっしり詰まった赤茶色のスープ、すまし汁のようなブイヤベースとは異なる)にルイユ(薬味の一種。ニンニク、トウガラシ、マスタードなどのピリ辛ペースト)を入れて味わってみたい。