地中海,フランス,ボルム・レ・ミモザ,bormes les mimosas
海と山に挟まれた、人に優しい美しき町
Bormes-les-Mimosas
ボルム・レ・ミモザ
(フランス)♦♦
Centro
Storico

海を臨む山の斜面に並ぶ旧市街の家並み

仏の地中海沿岸の町でも、ボルムは指折りの町だと思う。
 ガイドブックでは、もっぱら1年のうちたった10日のミモザ祭りの町として紹介されるが、祭りのない期間にこの町の本当の良さを感じることができる。
 一大バカンス地帯である南仏には、人間サイズのリゾート生活を送れるゆったりした雰囲気の町が、意外と見あたらない。
 あるのは、人や車がひしめく大都市、観光化された山村、別荘地、人混みのビーチ、逆に入場や行動が厳しく制限された自然保護区など、自由気ままな、ありのままの生活を送るべき町が、特に海の近くでは、このボルムを除いてはないのである。
 この美しい町では、リゾート感たっぷりの、スロー・シティーライフを送れることは間違いない。
 ボルムの町はビーチから平野にかけて広がるが、ここでお勧めしているのは、騒々しい海岸から2kmほど奥の、山の斜面にある旧市街の方だ。

テラスの眺めがよい郷土料理店「ホテル・ベルビュー」

冬のミモザも良いが、花が一斉に咲き揃う夏は一段と美しい

 港のあるファヴィエール地区から上がってきた車道は、山に沿って上下に展開する旧市街の真ん中あたりの高さのところでヘアピンカーブで絡んで、そのままグラテルー峠に抜けていく。
 このヘアピンカーブの付近のちょっとした広がりが、ガンベッタ広場(Place Gambetta)と呼ばれている。傾斜地にあるこの町には平地がなく、広場というより道路がちょっと広くなった程度のスペースにしか見えない。
 この周囲に、インフォメーション、数軒のホテルやレストランがあり、旧市街への入口に当たるので、一応旧市街の中心ということになるだろう。

夕方、陽が傾く頃に開店するプロヴァンスの露店

 ちょうどカーブの曲がる地点にひときわ目立つ年季の入った建物は、ホテルレストラン「ベルビュー(Bellevue)」だ。ホテルとしてはともかく、レストランはテラス席からの海や町の眺めが良く、手ごろな値段で郷土料理をしっかり味わうことができる、一押しの店だ。
 市街と反対側の少し先に、小さなサン・フランソワ・ド・ポール聖堂がある。その近くの町の駐車場入口脇に細長いスペースがあり、夕方になると多くの露店が開店準備で忙しい。
 日用品や小物などは、暑い日中でなく、夕涼みの散歩がてらの客に向け、夕方開店することが多い。



狭い斜面に横向きに建つサン・トロフィーム教会

ンベッタ広場に戻り、旧市街の中を歩いてみよう。広場から水平に町を貫くカルノ通り(Rue Carnot)は、町の銀座通りだ。
 オリーブ、石鹸、テーブルクロス、食器など、プロヴァンスらしい日用品を売るセンスが良い店が並んでいる。地元の人の商店街なので、品質も値段もリーズナブル、普段使いのお土産をどんどん買っておきたい。


町に良く似合う、ブティックの木の枝マネキン

 右手には町の主教会であるサン・トロフィーム教会が、山の斜面を利用して狭苦しそうに建っている。
 近くの石壁の上に座っているような人影は、脇道を上がったところのブティックのマネキンらしい。木の枝に上手に服を着せるセンスに脱帽。

町を水平に貫く目抜き通りのカルノ通り

 カルノ通りの両側の脇道にも、面白いショップやレストランがあり、うろうろして道草を食いながら、あちこちで楽しい足止めを受ける。
 途中下に向かって伸びる賑やかな細い脇道は、ロンピ・クー通り(Rue Rompi Cuou)だ。訳せば首折通り、大げさではあるが、歩きながら先を見ると首が折れそうなほど急坂と言うことか。

これが道? セニョール・ド・フォス城へ続く小路









 やがて、右手にレストランの大きな看板が出ているアーチがある。アーチの中にはテーブルが並び、どうみても店の敷地にしか見えないが、良く見るとリュル・デ・サラザン(Ruelle des Sarrazens)の通り名表示がある。

町の最高点にあるセニョール・ド・フォス城

 どうやら入口ではなく、建物の中を曲がりながらくぐって上の地区へ抜ける小道らしい。
 そのサラザン通りの一角にあるレストランを過ぎ、路地を縫うように適当に登っていくと、住宅街の中で、突然海の見える小広場に出て、ハッとする。
 さらに登ると、町のてっぺんにある小さな城の足元に着く。
 セニョール・ド・フォス(Seigneurs de Fos)城という13〜14世紀ごろの城で、その変わった名前は、中世にプロヴァンスの海岸地域で勢力を持っていた家柄の名だ。私有地のため、残念ながら中には入れない。


旧市街と海とを見下ろす「ル・グラン・オテル」

ルムからの素晴らしい景色を眺めるには、最高の場所がある。
 それは、町の一番上にひときわ高く聳えるル・グラン・オテルのテラスだ。

 1903年開業の歴史と気品に満ちたホテルで、決して豪華ではないが、眼下にボルムの町を収め、ラヴァンドゥーの海岸からイエール諸島までの雄大な展望を欲しいままにできる。

テラスからは海岸とイエール諸島が一望のもと