"地中海,フランス,ルシヨン,コリウール,collioure"
画家たちが愛して止まぬ港町
Collioure
コリウール
(フランス)♦♦
Centro
Storico

絵のような入り江の風景

仏で最も美しい港町、と言えば、いくつかの候補があがるだろう。しかし、スペイン国境に近い北カタロニアに位置するコリウールを忘れるわけにはいかない。ローヌ川河口付近に広がる広大な湿地帯を抜けてペルピニャンを過ぎると、単調な風景は一変する。ピレネー山脈が海岸にまで押し寄せ、海と山の織り成す風光明媚な景色が息つくまもなく連続する。コリウールはその一つの小さな入り江に潜む小さな港町だ。

カタロニア旗はためく離宮の入口

 小さな入り江は見事な玉砂利の海岸になっており、小運河を隔ててカタロニア領時代の王の夏の離宮があり、町はその反対側にまで広がっている。また背後の小高い丘の上には、スペインと領土を争ったフランスの砦が聳え立つ。海岸にたつの聖堂、オレンジの瓦の町並み、それはまるで一枚の絵のような均整の取れた風景だ。
 離宮からの町の全貌は素晴らしい。眺める漁村の風景、運河に係留されたカタロニア風の漁船、はためくカタロニア旗を見ていると、一瞬ここがフランスであることを忘れてしまうが、フランス語の響きでふと我に返る。カタロニア語が現代に生きているスペイン側とは異なり、ルシヨン地方(フランス領カタロニア)では、政府の同化政策の結果、カタロニア語が登場することはあまりない。

朝の漁港での水揚げ



 小運河を石橋で跨いで渡るとき、リゾート地に似つかわしくない潜水服を着た黒ずくめの一団の大きな掛け声にハッとする。訓練中のフランス兵だ。スペイン国境が画定し、前線としての意味を失った今でも、地中海を睨む基地としての機能は維持されている。運河沿いはプロムナードになっており、アトリエやカフェなどが軒を連ねる町で一番華やかな地区となっている。

マチスはここでこの絵"Les toits de Collioure"を描いた

ォービズムの画家たちにとって、光と色彩に溢れるこの町は特別の場所であった。所々にある立て看板には色鮮やかなフォービストたちの絵やスケッチのレプリカが貼り付けられている。マチス、ドラン、デュフィなどのこの町を愛した画家たちの作品のプリントが、イーゼルを建てたその場所に設置されており、それらを巡るのも楽しい。確かにこの町には、青、緑、赤、黄、白、橙、あらゆる色彩が溢れている。運河沿いには「レ・タンプリエ」という、20世紀始め、彼等が定宿にしていたホテルがある。すばらしいアンティーク家具と共に、彼等が残した習作が壁という壁を埋め尽くしているのが見ものだ。

カタロニア漁船の脇のカフェではサラダとムール貝を楽しみたい

小島の上のサン・ヴァンサン(St-Vincent)礼拝堂


 海に面して築かれた城壁で市街地は守られているが、今は海辺にまでリゾート気分いっぱいのカフェが広がり、太陽を求める客で冬でもツーリストが絶えない。その先には、オレンジ色のドームを擁く、要塞を兼ねたような作りのノートルダム・デ・ザンジュ教会(天使の聖母教会)が聳え立つ。ビーチの背後の堤防が、その先の十字架のある小島まで伸びているで行って見よう。岩礁の上に小さな礼拝堂があり、そこからは、崖の上に広がる旧市街、町を守る軍艦のような離宮、砦、そして遥か上方へ連なる峰々のパノラマが一望のもとだ。


坂道にアーティスティックな外観のアトリエが点在する旧市街

市街に入っていくと、斜面にはカラフルな家並みが続き、所々にフォービズムの画家たちの足跡を示す作品のレプリカが置かれている。画家を引き付ける魅力はもちろん今も変わっておらず、路地のあちこちにアトリエが散在する。一軒一軒の家の表情は細部にまでデザインされていて、それを順に眺めて歩くのも楽しい。

町中のアトリエの入口




たとえば雨どいには、緑色の陶器製の排水溝が使われており、その吐出口が竜か何かの口のデザインになっていたりする。幹線道路を隔てた反対側にはアンチョビ工場の直営店が見られる。この町はアンチョビの産地としてもまた有名で、今ではイワシ漁に出るものはいなくなったが、近くの漁港から仕入れてきたイワシを一つ一つ手作りでアンチョビに仕上げている。

アンチョビ販売店のディスプレイ

   



 加工法が違ういくつもの種類のアンチョビが店内に並べられている。その先のワイン直売店を訪ねてみるのも良い。地元コート・ヴェルメイユのバニュルスなど、良質なワインを入手できる。