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ギリシアの東の果ての島
Kastellórizo
Καστελλόριξο
カステロリゾ
(カステロリゾ島 −ギリシア)♦
Centro
Storico

乾燥した山に抱かれた鄙びた漁港

ーゲ海からイオニア海にかけてギリシアの国土が広がるが、かつてその東のトルコ周辺にも多くのギリシア人たちが住んでいた。
 殆どが1923年のローザンヌ条約により追放となり、古代から住み続けた町を捨てギリシア国内への移住を余儀なくされたが、当時の英国領キプロスと、イタリア領カステロリゾだけは、その後もギリシア人が住み続けることが可能だった。

港の入口で睨みを利かす、地名の由来となった赤い城(カステロ・リゾ)


 キプロスは共和国として独立した一方、カステロリゾは幸運にもギリシアに編入され、時には(特にギリシア国外で発行された地図には)地図にも載らないことがあるほどの、ギリシア最東端の離れ小島という特異な存在となった。
 最も近いギリシアの島、ロドス島から船で東へさらに数時間かかる一方、トルコの町カシュは目と鼻の先だ。
 小さな島の歴史は、それだけで1ページを費やすほど複雑怪奇なもので、中世のビサンティン帝国以後、現在まで、オスマントルコ、聖ヨハネ騎士団、マムルーク朝エジプト、ナポリ王国、ヴェネチア共和国、オスマントルコ、ギリシア王国、オスマントルコ、イタリア、フランス、イタリア、イギリス、ドイツ、イギリス、そして現在のギリシア共和国と帰属を変え、そのたびに島の名前も変わっている。

城の下の崖には、古代リキア人の石窟が刻み込まれている

 現在はふつう、1921〜1941年の間領有したイタリア時代のカステルロッソ(Castelrosso−赤い城)名がギリシア語化した地名の「カステロリゾ」と呼ばれるが、正式な島名は「最大」を意味するメギスティ(Megísti/Μεγίστι)だ。
 長さ10km程のちっぽけな島の名前が「最大」とは謎かけのようだが、実はトルコの地中海沿岸のカシュ沖で諸島を形成している、カステロリゾ、ケコヴァなどの島々の中で、面積が最大であるからそう呼ばれているのである。

城から見渡す、美しい港の全景

 混乱が続いたオスマン帝国崩壊後の国境確定作業時、たいした価値がなかったであろうこの諸島にイタリアはそれほど強い関心を示さず、この島を含む比較的大きい3つの島だけ自国に組み入れたため、それ以外の島はトルコ領になっている。
 19世紀には、ロドス、キプロス、ベイルートを結ぶ航路の中継地として、小アジアの産物の積み出し港として発展し、町の人口は15000人を数えたという。現在、わずか400人ほどとなって観光と漁業とを細々と生業としている様子からは、想像もつかないほど賑やかな時代もあったのだ。
 イタリア映画「Mediterraneo(地中海)」(邦題「エーゲ海の天使」)の舞台となって以来、観光地化が進むエーゲ海と一線を画す、鄙びた地中海のリゾートとして徐々に知られてきている。


岸壁の歩道がささやかなメインストリート

った一つの町カステロリゾは、乾燥した島の波静かな入江に、数百軒の家々が肩を寄せ合うように集まる、絵のように美しい小漁村だ。
 車はほとんど見かけない。一巡り歩き回るのに1時間もかからないサイズであるうえ、町内の道は細く、空港との往復を除くとあまり必要性がないのだ。
 第二次大戦時の爆撃や地震の被害により、かつて栄えた町の面影はない。しかし再建されて恐らく数十年は経つであろう家並が、ほどよい落ち着きを見せている。
 湾の入口左手の高みは大戦前に町があったところで、現在島の名前の由来となった赤い城の跡だけが博物館として残っている。
 対岸からのトルコ軍侵攻に備え、数名のギリシア兵が廃墟の物陰からの見張りに余念がないが、現時点(2007年5月)では危険はない。城の下の岩に掘削された古代リキア人の墓所が見られる。

廃墟となった旧市街で、カテドラルだけが健在

 廃墟となった古い町の、もう一つの主な建造物はカテドラルである。ここは峠状の地形になっていて、港のある現在の町と、小さなマンズラキ港とを分けている。
 車の入らない静かな港の回りの岸壁に沿って、町の中心をなす建物が並んでいる。ホテル、警察、郵便局、食堂、カフェなど、町の主な施設が全て並んでいる。といっても、正式なホテル、アパートが各数軒あるのみだ。またタヴェルナもこのあたりに並んでいる。
 島内には他に町はなく、古代のアクロポリスに歩いて登るか、船でブルー・ケイヴを見にに行くのが主なエクスカーションだ。

島の前方に広がるきれいな海、対岸にトルコ領カシュの町が見える


 島を訪れるには、ロドス島から飛行機(週5日、40分)か高速船・フェリー(いずれも週2〜4便程度、所要2時間半・4時間)を利用するのが良い。できればゆっくり宿泊していきたいが、ハイシーズンは宿の確保が難しいかも知れない。高速船やフェリーの時刻がうまく合えば日帰り旅行も可能だろう。
 意外なことに、トルコのカシュから日帰りツアーで訪問するのが一番手軽な方法だ。前日に予約し、当日朝夕にカシュ警察署で出入国手続を行うだけだ。後はツアー船の船主の指示に従えばよい。片道わずか2.5km(約40分)の小旅行だ。正規の国境越えルートではないため、日帰りのみ可能で、可否は政治情勢にも左右される。