"地中海,イタリア,ポルト・ヴェネーレ,porto venere"
華麗なるジェノヴァの要塞都市
Porto Venere
ポルト・ヴェネーレ
(イタリア)♦♦
Centro
Storico

頭上に城を頂くカラフルな要塞都市

の前に浮かぶパルマリア島との間の狭い水路に面したポルト・ヴェネーレは、ジェノヴァを守る要塞として現在の姿に作り上げられた。
 町はラ・スペツィアとチンクエ・テッレを隔てる半島の先端にあり、ラ・スペツィア湾はリグリア州の東端、その先は中世に激しく覇権を争ったトスカーナの旧ピサ領だ。

海から近づくと最初に目にするシンボル、サン・ピエトロ教会(船上より)

 旅の途中に立ち寄るのであれば、鉄道がなく道路のどん詰まりにあるこの町へは、リオマッジョーレからであれ、レリチからであれ、中世よろしく船で訪れることになる。
 すると、まず目にするのが、それ自体巨大な要塞として鋭く聳えるパルマリア島、そして半島側に築かれた壮大な砦、そして見張り台のように海峡に突き出た岩礁の上のサン・ピエトロ教会で構成された、頑強な防衛網だ。それを縫って船が進んでいく様は、まるでファンタジー映画のワン・シーンのようでさえある。

往年の栄華を伝える立派な岸壁

とたび中の水路に入ると水は穏やかで、山影に沿うように港に向かって驚くほどカラフルで美しい町並みが列を成している。
 下船して岸壁を歩いて行くと、近代に県都ラ・スペツィアが整備されるまで東部の重要な港湾都市であったことを髣髴とさせる壮大な港湾施設に肝を抜かれる。
 岸壁に面して色鮮やかな可愛らしい建物がびっしり立ち並んでいるが、その多くが7〜8階建てであることがかつての繁栄を物語る。今は観光用のカフェや、魚介類のおいしいレストランになっている。

まるで城壁のように並ぶ中世の高層建築

 この海沿いの表通りに平行して、町の中を中世の通りが貫いている。
 ラテン語でCOLONIA IANVENSIS(ジェノヴァの植民都市)と記された城門の中へは、中世の高層建築の谷間の薄暗い路地が伸びている。特産品や土産物を売る店、バールなど、生活感のある店が軒を連ねている。
 海に面してびっしり一列並ぶ建築は、どうやら城壁の役割をかねているようだ。まさに城塞都市である。
 石畳が上り坂になると町並みは途切れ、迷路のように複雑な砦の一部に差し掛かったことに気がつく。

灯台であるかのように岩礁上に立つサン・ピエトロ教会

台にある立派なサン・ロレンツォ教会を覗いてさらに登っていくと、どんどん視界が開けてくる。
 遥か上の城までの道中、眼下のサン・ピエトロ教会とパルマリア島、そして遥かトスカーナやジェノヴァ湾を見渡す壮大なパノラマが堪能できる。
 城から岩礁の教会へと下っていこう。右手の小さな入江は中世の軍港だが、その岩を削った桟橋は海を楽しむリゾート客の日光浴の場として占拠されている。そこにあるバイロンの洞窟は、この町が気に入って逗留した詩人バイロン卿に因んだものだ。

城から町とパルマリア島を見下ろす

 岩礁に立つ白と黒の横縞が特徴であるジェノヴァ風のサン・ピエトロ教会の中に入ると、内部は殺風景である一方、回廊から素晴らしい海の眺望が得られ、それが祈りの場というよりも見張り台であることが強く感じられる。
 この教会まで来ると初めて、チンクエテッレが一望できる。

岸壁のレストランはおいしい魚介類で人気
─ラ・マリーナ・ダ・アントニオ(La Marina da Antonio)


 時間があれば、対岸のパルマリア島へ渡って見ても良い。
 向こう岸からポルト・ヴェネーレを眺めるレストランや、島の裏側のビーチや洞窟など、ゆったり楽しむにはまたとないエクスカーションとなる。