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まさに文字通りの「水の都」
Venezia
ヴェネチア
(イタリア)♦♦
Centro
Storico

海上に浮かぶヴェネチアの風景

の都ヴェネチア、もはや言い古された言葉だ。埋め立てを重ねて海上に拡張した都市、水路が張り巡らされ交通手段は徒歩と船だけ。少なくともイタリア観光に行ったことのある人なら一度や二度は見たはずの光景だ。
 だが、初冬のヴェネチアに行ってみるといい。毎年この季節になると、アクア・アルタ(高潮)が訪れる。ヴェネチアは本当に海に沈んでいる。サンマルコ広場は水浸しで、観光客は日本庭園の池の上に渡された桟橋さながらに、水の上の細い木の橋を渡って通過する。

大運河に沿って連なる繁華街

 そうは言っても、霧の多いアクア・アルタの季節より、やはり水の涼しさを楽しむ夏の季節がお勧めだ。
 ヴェネチアへは飛行機、列車、車で入る。マルコポーロ空港は、ターミナルビルから出るともうそこは海、という信じがたいロケーションにある。すぐに水上タクシーに乗り込み、海に面したホテルの正面玄関に船付けするのが正解だ。列車で到着した場合も、駅舎を抜けると駅前広場かと思えば、いきなり海になっている。街は大小様々な運河を挟んだたくさんの島の集合体で成り立っていて、それらは橋で結ばれている。島内は迷路のような石畳の路地が張り巡らされている。路地と橋をつないで最短距離で目的地にたどり着くのは至難の業だが、それができるようになると本物のヴェネチアーノだ。

東方的なヴェネチア建築のデザイン

タリア各地を旅してきたなら、この町の全くイタリアらしからぬ雰囲気に驚くであろう。建物を飾るエキゾチックな装飾、耳慣れぬヴェネト語、そして背が高く青い目のゴンドリエ(ゴンドラの漕ぎ手)たち。それはこの国の歴史抜きには語れない。ヴェネチアは約200年前まで、ヴェネチア共和国の首都であった。そしてこの国の領土は、現在のクロアチア、ユーゴスラビア、ギリシア、キプロスへと広がっていた。まさに東地中海ないしは中東の国の首都であったのだ。だからヴェネチアは、この街について1冊の本ができてしまうくらいの見所とエピソードに満ちている。

ゴンドラで生活の場を探検するのも一興

 そんなヴェネチアを最初に訪れたなら、カナル・グランデ(大運河)に沿ってのヴァポレット(水上バス)での旅行がよい。島の上には広い道がなく、まさにカナル・グランデが目抜き通りの役割を果たしている。
 主要な建物は全て運河に面していて、運河側に正面玄関を持っているので、観光は水上からするのが正しい。時おり横切るヴァポレット(渡し舟)やゴンドラを眺めながら進んでいく。
 ゲットー(ユダヤ人居住区)を過ぎて先へ進むに従い、重要な商館や邸宅が多くなりファザード(建物の正面)が豪華になっていくのが分かる。市場を過ぎるてすぐ潜るのがリアルト橋だ。

リアルト橋の雑踏

 昔から島民の生活を支えていたこの一帯は今でも、観光客相手の土産物やレストランなどが集まる商業の中心地だ。どうせ立ち寄るなら、路地裏ある住民用の店の方が面白い。
 水面を賑わすゴンドラを避けながらさらに進むと、両岸の建物はますます大きく豪華になっていく。大学、教会、美術館、税関など、公共施設が多くなってきたのだ。白亜のサンタマリア・デラ・サルーテ教会の美しいシルエットと、かつて共和国への入口の役目を果たした海の税関のシンボリックな造形が目に焼きつく。その先は海への出口で、ここで一気に視界が開ける。

巨大かつ壮麗なサン・マルコ大聖堂

 程なく、ヴァポレットは有名なサンマルコ広場にたどり着く。街の新旧両聖人すなわち、聖テオドーロと聖マルコを戴く円柱の間を進みサンマルコ小広場に進んでいく。右手方向には、壮麗なドゥカーレ宮(総督府)とサンマルコ大聖堂が並立しており圧倒される。どちらも珠玉の至宝なのでゆっくり見学したい。
 一方、左手奥の鐘楼は、最上部から海に浮かぶモザイクのような奇跡の街の眺めが楽しめる。L字型に曲がった奥の部分が、今や観光客に占拠されてしまったサンマルコ広場である。

サン・マルコ広場の鐘楼の上から見たヴェネチアの美しい眺め

在日数に余裕があるなら、一つ一つの裏の路地を回るのは本当に楽しい。小さな運河で、自宅の前に止めてある自家用船で用足しに出かける住民の姿、地元民御用達のオステリア(食堂、兼居酒屋)に旅情が感じられる。視点を変えてゴンドラに乗って水面から街を見るのも面白い。また有名なカルナバル(謝肉祭)を始め、レガッタ、スポザリーツィオ・デル・マーレ(海との結婚)などの祭事に訪れ、街の伝統を感じてみるのもよいだろう。