"地中海,ポルトガル,メルトラ,mertola"
国内随一のモスクが残る旧イスラム都市
Mértola
メルトラ
(ポルトガル)♦♦

ラブ人との戦いに一足早く勝利したポルトガルには、イスラム時代の痕跡は意外なほど少ない。
 だからメルトラは、アラブの香りを伝える数少ない貴重な遺産だ。
 グアディアナ川は、灼熱の大地を切り裂く、少なくとも中世までは唯一の動脈だった。
 古代のフェニキア、ローマ、ギリシアの人々も川を遡り、渓谷状に天然の要塞を形成するこの場所を拠点としてきた。
 海を渡ってきたアラブ人たちもまた同じで、メルトラはポルトガルとアフリカとの交易の積出港として繁栄した。
 川を見下ろす高台に立つ町は、地区教会に転用されている旧モスクを核に、古い城壁で囲まれた旧市街を持つ、美しい姿を残している。
 真っ白に塗られた聖母昇天(Nossa Senhora da Assunção、ノッサ・シニョーラ・ダ・アスンサゥン)教会[写真上]の、屋根に見られる尖形の装飾、聖堂内の等間隔の柱やミフラブは、モスクそのものだ。
 一方、現存する立派な城は、ポルトガル併合後に作られたものだ。
 城壁から見下ろす川とグアディアナ渓谷国立公園の緑の大地が、赤屋根の家々と美しいコントラストをなしている[写真下]。
 21世紀のメルトラは、経済発展から取り残され、観光に望みを託す田舎町だ。リゾート地とは違う中世の南ポルトガルを感じてみたい。