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岩の下で暮らす町
Setenil de las Bodegas
セテニール・デ・ラス・ボデガス
(スペイン)♦♦
Centro
Storico

り出した岩の下に人々の生活の場がある町、それがセテニールだ(長い町名なので後半は省略されることが多い)。
 実際、訪れるまでは貧しい人々がひっそりと谷間に住むようなイメージを持っていたが、全くの間違いだった。
 人々は岩の下で眠るだけでなく、憩い、語らい、挨拶し、買物し、飲食し、さらに運転し、キャッシュを引き出していた。
 迫り出した大岩は、つまり日差しを避ける天然の木立でありアーケードであったのだ。
 もともと地中海地域では、洞窟はよくある居住形態であった。現代においても各国の農村部の幾つかの地方では、伝統的な家の作りとして珍しくはない。
 セテニールの岩の下の家はそのさらに念入りな変形で、川の水流の浸食で抉られた岩の下のスペースをさらに掘り進んで住居にしたものである。
 セテニールに到着して眺めると、普通のオリーブ畑に囲まれたアンダルシアの白い町にしか見えない。現代では膨張した町が洞窟地帯から溢れ出し、周囲にごくありふれた街並みを形成しているためだ。
 しかし高台から眺めると、町の地形は三次元に捻れた複雑なうねりをもっており、よく見るとS字型に一筋の切れ込みを持っているのが分かる。グアダルポルクンという小川が大地を削った部分だ。


の建て込んだ町の斜面を下っていくと、今まで見えなかった部分が明らかになってくる。曲がりくねった川の水は乏しいが、恐らく雨期には増水するのだろう、川幅の倍以上に大地の岩盤を深く抉っており、何とその両側の岩の下は街並みになっているのだ。岩の下に道路が走りその奥は家並になっている。
 対岸から見ると、地面の層の上には住宅やオリーブ畑があり、その真下に再び道路や住居があるのが分かる。
 岩の下の街区には、商店やバールがあり、大きく抉れて道幅に余裕がある部分ではバールのテーブルが道路まで広げられ、夏の日差しから逃れ涼しい日陰の川岸で寛ぐ人々でいっぱいだ。
 立ち話をする人がいれば、狭い部分では渋滞も起こり、全くありふれた生活の場になっているのが面白い。
 上の地層からは草木の細い茎や枝が垂れ下がり、天然のディスプレイになっている。
 この賑やかな一帯から渓谷に沿って進むと、徐々に寂しくなってきて、やがて行き止まりになった。渓谷の市街の末端部らしい。
 その先には歩道がさらに続いており、塗装が剥げた人気のない廃墟のような一帯が続いている。やはり時代と共に、少しずつ洞窟暮らしは減ってきているのだろうか。

上げると、一段と高い岩の上に教会が見える。そこまでの登り道沿いにも、岩を抉った住居が続いている。真夏には40℃を越える暑いこの地での、一種の生活の知恵なのだろう。
 最上部の一段高い部分には教会があり、そのテラスからの周囲の展望が素晴らしい。この周辺に、小さな町で数少ない観光客の居場所となるカフェ、レストラン、ショップが数軒ある。
 アンダルシアの観光化されていない白い村は交通不便な山間に多いので、訪れるならロンダに比較的近いセテニールは、第一の候補になるだろう。