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市場の近くで魚が食べられる食堂
Da Pina
ダ・ピーナ
(パレルモ −イタリア)
レストランというより、食堂

   この調理台がメニュー。ここから好きなものを選んで注文する。

めにおことわりするが、この店はレストランではなく、食堂である。看板もなければ店名もない。ついでに言うならメニューもない。すぐ近くのヴッチリア市場(Vucciria)は、パレルモ市民の台所として最も長い歴史を持つ市場だ。そこで手に入るシチリアの新鮮な海の幸を、最低限の調理で安く食べさせてくれるのがこの店だ。まさに国内で、魚市場の近くにある食堂と同じと考えてよい。
 店を見つけるのは意外と簡単だ。今やパレルモ市でも主要な観光地の一つになっているヴッチリア市場をめざそう。駅からまっすぐ伸びるローマ通り(Via Roma)から、直接市場のカラッチョーロ広場(P. Caracciolo)に下る階段を下りてまっすぐ進む。市場を通り抜けて住宅街に入ってすぐ左側だ。看板はないが、魚屋かと思うほどの大量の魚をせっせと調理する様と、暖かい季節なら路上に張り出したテーブルで食事をする観光客ですぐわかるはずだ。世界的に有名なガイドブック、ロンリープラネットによると店名は、「ダ・ピーナ(Da Pina)」と言うらしい。昼だけの営業となっている。

ここが入口。看板はないが、誰かが食べているので分かる

 戦場のような調理場


   料理というより「おかず」と言ったほうが相応しい

 入口付近のテーブルで食事する客の脇をすり抜け店内に入るには、まず調理場の脇を通り抜ける。おびただしい数の下処理を済ましたエビとイカ、それから丸ごとの魚や、野菜・キノコなどの何種類ものおかずを入れたトレイの列。
 二人の女性が手際よく包丁を裁き、奥のガス台では誰かが揚げ物をしている。戦場のようなこの調理台が実はメニューを兼ねていることに気付いたのは、席についてからだった。
 まるでレストハウスに備えつけのテーブルセットのような、または日本にもよくある安食堂と同じようなテーブルに腰掛けて見回すと、店内は普通の家庭の作業部屋か物置のような殺風景さだ。南イタリアのどの家庭にもあるピオ神父の肖像が、庶民的な雰囲気をかもし出している。


庶民的な食堂料理の数々

   パスタは、さっと作った白身魚のソースで

ばらくして店員が聞きにくるので、何でも食べたいものを言えばよい。ただし注文できるのはもちろん先ほど調理場を通ったときにあった食材からできるものだけだ。しっかり食べたいなら、トレーのおかずを盛り合わせて前菜とし、お好みの具材で作った簡単なソースのスパゲッティ、そして食べたい魚介類を焼くなり揚げるなりしてもらうとよい。


   この店にワイングラスは煮合わない





 飲み物はグラスでなくプラスチックのコップが出るので、頼んだカラフのワインを自分でついで飲む。グラスがないのは、イタリアの安食堂では珍しいことではない。


   粉をつけ素揚げしただけの魚介のフリット盛り合わせ

 さて、味のほうはといえば、前菜とパスタはまさに手作りの家庭の味、料理というよりおかずとかラーメンといった感じで、気軽にどんどん食べられる。有名なレストランとはまた違う、B級グルメのおいしさだ。
 そして新鮮さが命の魚介類は、凝った調理やソースは何一つされていないが、まさに浜の屋台や食堂の味、素材のうまさがそのまま生きている。手が込んでいない分だけ、ある意味なつかしい日本の漁港の味に近いものが感じられる。
 この食堂は誰にでもお勧めできる店ではないが、シチリアの家庭の味・庶民の食堂の味を体験してみたい方、また出来るだけ良い素材の料理を安く食べたい方は、ぜひ行ってみると面白い。普通の旅行では触れることの出来ないイタリアの別の一面を、きっと感じることが出来るだろう。

Da Pina(ダ・ピーナ),
Via Cassari 69, Palermo (PA), Italia., (-->地図35
Tel: なし,
店舗URL:
紹介URL:
営業時間: 昼
休日: 不明,
カード不可,
パレルモ駅から市内に一直線に伸びるローマ通り(Via Roma)を進み、ヴィットリア・エマヌエーレ大通り(Corso V. Emanuele)の交差点を過ぎてすぐ、右に下る階段に入る。階段下のカラッチョーロ広場(P. Caracciolo)をまっすぐ抜け、ヴッチリア市場(Vucciria)を過ぎてすぐ左側。看板はないが、観光客が路上のプラスチック製ガーデンセットに座って食べているのですぐわかる。

2006.5.7掲載