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地中海の空気を肌で感じるレストラン・食堂( in 東京)


 地中海地域のおいしいレストランや食堂に共通するイメージ、それは自然に囲まれて、またはのんびりした田舎の村で、その地の新鮮な食材の持ち味を生かした、素朴ではあるけれども豊かな品々を味わう、というものかと感じられます。地元客、観光客が集まり、いつも満員で活気に溢れているお店では、てきぱきした店員さんの動き、包丁のリズム、鍋で炒める音、料理の匂い、お客の楽しげな会話、そして料理のメニュー構成、味わい、盛り付け、こうした全てが混ざって空気を作りあげています。

 ここでは、そんな地中海各地の雰囲気が出ているお店のリストを作成してみました。決して美味しい店、料理の良い店のリストというわけではありません。判断基準は、メニューや雰囲気に現地の空気を感じられる、と思ったかどうかだけですので、ご了解お願いします。


店名料理特徴
イル・ブッテロ
(広尾)
トスカーナ
(イタリア)

雰囲気、料理ともトスカーナではごく普通にある感じの、緑に囲まれた一軒家のレストラン。フィレンツェ人シェフによる料理は、メニュー、調理法、味付け、盛り付けなどが全てトスカーナのリストランテそのもの。オーソドックスなのであまり評判に上がらないが、こんな空間が東京にあることに驚かされる。

リストランテ・ステファノ
(神楽坂)
ヴェネト
(イタリア)

路地の奥にある割と新しいレストランだが、ヴェネト州の山に近い地方出身のステファノ氏の料理は、ヴェネトやトレンティーノ、フリウリなどの気の利いたリストランテのような味わいと美しさだ。山と大地の恵みである肉や野菜が得意だが、ヴェネチアの魚系のメニューもおいしい。

ラ・スコリエーラ
(赤坂)
南イタリア

日本のイタリア料理店の魚は、イタリアで食べるほど旨くないが、この店は例外だ。漁師から直接仕入れているので素材の良さで本場の味を再現している。インテリアのセンスもよく南伊の漁港のリストランテに行った気分だ。メニューはサルデーニャ、シチリア料理が中心で、メカジキのリブや粒状パスタのフレーグラも美味しい。

イル・ピッチョーネ
(新宿)
イタリア

東新宿駅近くの静かな地区にある家庭的なリストランテ。今井シェフが現地で習得した、ピチやプーリア風羊のグリルなど素晴らしい郷土料理が楽しめる。シェフが最も得意とするのは日本の素材の持ち味を活かしたオリジナル料理で、こちらも大変レベルが高い。

トラットリア・シチリアーナ・ドン・チッチョ
(渋谷)

シチリア(イタリア)

海と太陽の島・シチリア、それが詰まった食材を形にしたシチリア料理を常時出す店は、このドン・チッチョを除いて殆ど無い。旧店「トンマッズィーノ」時代のカジキ、ウイキョウなどを多用した料理はさらに磨きがかかり、居心地のよいサービスはそのままに、インテリアも温かみがあるものとなった。東京を代表する名店になったのでは。

エリオ・ロカンダ
(半蔵門)
イタリア

どの町にもある土地っ子に人気のリストランテ、それを再現したのがエリオ・ロカンダだ。どの皿もおいしく、温度、タイミングとも完璧、スタッフの程よいもてなしが心地よい。シェフのエリオの料理は、飾り気が無いのに繊細で心温まるイタリア地方料理そのもので、いつも故郷を懐かしむイタリア人でいっぱいだ。

イル・バカーロ
(新宿)
ヴェネチア
(イタリア)

ヴェネチアの路地裏には、バカーロという食堂とバーを兼ねた地元民用の小さな店が数多くある。それの味と雰囲気を忠実に再現したのがこの店だ。立ち飲み・立ち食い用のカウンターもそっくりな上、値段まで極力再現するよう努力しているのがうれしい。美味しいヴェネト料理が気軽な価格でいただける。

スーペルバッコ
(吉祥寺)
ヴェネチア
(イタリア)

上にあげた「イル・バカーロ」の姉妹店。経営母体が同じでスタッフの行き来もあるので、味・雰囲気とも瓜二つ。

タンタローバ
(茗荷谷)
北イタリア

ピエモンテ料理ベースの新田シェフの料理は、日本のイタリアン(トスカーナ〜南イタリア中心)に馴染んだ人には違和感を持つまでの北部らしいしっかりした味付けの北イタリア料理だ。タヤリン(タリオリーニ)、マルタリアーティなどの生パスタから、幻の料理カッポン・マーグロまでの妥協の無い料理は、現地と同じ出来栄えだ。レンガを敷き詰めた舗道に面した桜並木の下のテラス席は、日本にいることを忘れさせる。

ナプレ・東京ミッドタウン店
(乃木坂)

ナプレ・東京ミッドタウン店(南イタリア)

ピザ、パスタ中心に南伊料理がおいしいトラットリア。奇を衒わず、客受けを意識しないベーシックな食堂料理に、目の前に緑が広がるゆったりしたオープンテラスが醸し出す大らかさがイタリア的だ。美食を賞味しにいく店ではない。ミッドタウンの人気店で予約が取りにくいのが難点。

エル・カンピドイオ
(経堂)

イタリア

ローマ料理を得意とするベテラン吉川シェフの食堂。木組の田舎風の小さな店にぴったりのトラットリア風の料理が並ぶが、腕はリストランテそのもの。ボリュームたっぷりのほっとする味わいの料理は、現地の都市郊外で評判の普段使いの店を髣髴とさせる。地の利が悪く関係者の来店比率が高い(=一般客が少ない)らしいが、洒落たイタリアン全盛の今、貴重な文化財のような店だ。

インカント
(広尾)

インカント(イタリア)

日本にここまでに凄い店があるとは驚いた。ワインのチョイス、料理のレシピ、どれを取っても現地の名店に引けを取らない。味より見た目重視の懐石好き日本人を眼中にいれず、直向に本物の料理を追求した結果であろう。店主を兼ねる竹石ソムリエは、地域差の大きいイタリアの地ワインまで知り尽くしており、現地で気に入ったワインにここなら出会えそうだ。

テオドーラ
(目黒)

プロヴァンス(フランス)

プロヴァンス料理を中心に、広く地中海料理を取り入れている。室内のどっしりした木のテーブル、広いテラスにも同じく大きな木のテーブル。鮮やかな色使いの家具やプロヴァンス焼きを配した店内は、プロヴァンスの田舎家を思い起こさせる。料理もまた、南仏の技法をストレートに素材・調理・盛り付けに反映させた皿の数々を、スローな気分で愉しみたい。

ラ・タペリア
(四谷三丁目)
タパス専門店
(スペイン)

スペインにはバールという独特の業態があり、タパスと呼ばれる惣菜ないしは小皿料理を中心に、ドリンクやパエリアなど、本格的な料理以外は何でも食べられる。カルロスが本場のバールの味を見事に日本で再現している。ボケロネス、ピンチョス類、プランチャ類など、いずれもお見事。

イズミル
(阿佐ヶ谷)
トルコ

各種メゼから、ケバブまで、本国以上に丁寧なつくりで、日本人の味覚に合わせず忠実に味を再現しているのは、イズミール出身のスレイマン。もちろん彼の十八番の知る人ぞ知る超うまいエキメキ(トルコパン)や、アイラン、ドンドゥルマなどの味も保証付。チャイも現地と同じトレーとカップで出される。

トロカデロ
(下北沢)
フランス

下北沢の商店街に突然現れる、フランスのビストロを再現した店には、フランス人のギャルソン。雰囲気だけかと思えば、料理は輪をかけて本物のビストロ料理。メニューや調理法が妥協無く再現されており、ハムやツナのオイル漬けなどまで全て手作りの一味違う逸品がボリュームたっぷりに供される。

プチトノー虎ノ門店
(虎ノ門)
フランス

オフィス街の一角、ビルの1階にあるフランスのビストロを再現した店。テラス席でフランス人のギャルソンと会話をしていると気分はパリ。メニューはオーソドックスなビストロ料理で味も本格的。

カルタゴ
(中野)
チュニジア

中野駅に近い路地にあるチュニジア料理店。ドアを開ける前からアラブ的な雰囲気に満ちており、店内にもアラビア語が溢れる異国的な空間。見かけはエスニックなカフェっぽいとも言えるが、フムス、オジャ、ブリック、タジン、クスクスを始め、定番のチュニジア料理が、現地の腕利き料理人並みの最高品質で味わえる。