国境の港町の実力派トラットリア | |||||||
タリアに唯一留まった旧ヴェネチア共和国海外領の港町ムッジァは、だから同じイストリア半島のスロヴェニアやクロアチアの港町と似ている。
この日は夜遅く町に着いたので、とにかく冒険せず間違いない料理をしっかり食べたいと思い、雨の中、夜9時半過ぎに入店した。驚いたことに店は満席だったが、隅の方の中途半端なテーブルを整理して、何とか席を作ってくれた。
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洗練された美しいアンティパスト | ||||||||||||
気の秘密は、料理が運ばれるに連れ分かると共に、さらに驚きに変わった。メニューや技術に、他にない特徴や図抜けたものはなく、ミシュランの星を取るような創作料理が出るわけでもない。ただ、フリウリ地方の海辺の地元料理─日本のイタリア魚介料理のイメージに近い─を愚直に追求しているだけだ。
ワインは白でお手ごろなものを勧めてもらい、ドーリゴのピノ・グリージョにした。地元フリウリのウディーネ近郊の丁寧な作り手で、国内でも評判が高い。 魚と野菜のテリーヌのお通しを前によく冷えたドーリゴを飲みながら待っている間にも、自家製らしきおいしいグリッシーニ、フォカッチャについつい手が伸びてしまう。 アンティパスティには、鮮やかなバジリコのソースが目にも口にも印象的なタコのマリネ、マスタードが程よく効いたカニのグリーンサラダ合え。どちらも、お洒落な皿や盛り付けは、太い木の梁としっくいで固めた内壁の田舎の雰囲気からは想像つかぬほど繊細さだが、それでいて肩肘の張らない寛いだ雰囲気をゲストやスタッフが醸し出している。
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