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最高に美味しい海の幸がある気さくなトラットリア
Risorta
リゾルタ
(ムッジァ −イタリア)♦
国境の港町の実力派トラットリア

港の桟橋にある、見るからに海の食堂風のトラットリア

タリアに唯一留まった旧ヴェネチア共和国海外領の港町ムッジァは、だから同じイストリア半島のスロヴェニアやクロアチアの港町と似ている。
 海岸5kmも辿るとスロヴェニアになる国境の小さな港は、イタリアを母港とするヨットや漁船で満杯だ。
 港の桟橋に半分食い込むような建物に、120年続く老舗のトラットリア、リゾルタがある。日が落ちて真っ暗になった桟橋で、店名を示すサインだけが黄色く辺りを照らしている。

 レシピに良く合う梁と白壁の寛いだ雰囲気


 店内の、落ち着いた緩い雰囲気は、建物に年季が入っているためだけではなく、客層が華やかなリゾート客、周囲から浮いた観光客ではなく、寛いだ雰囲気の地元客であるためだろう。それだけこの店が支持されていることが伺える。

 伝統あるこの食堂は、場所柄、魚料理を得意としている。決して珍しい料理が出るわけではないが、この小さな町で、味に信頼が置ける一番の店といえるだろう。
 この日は夜遅く町に着いたので、とにかく冒険せず間違いない料理をしっかり食べたいと思い、雨の中、夜9時半過ぎに入店した。驚いたことに店は満席だったが、隅の方の中途半端なテーブルを整理して、何とか席を作ってくれた。

 ドーリゴのピノ・グリージョ。最高のチョイス。


洗練された美しいアンティパスト

タコのグリーンソースは見た目も味も抜群

気の秘密は、料理が運ばれるに連れ分かると共に、さらに驚きに変わった。メニューや技術に、他にない特徴や図抜けたものはなく、ミシュランの星を取るような創作料理が出るわけでもない。ただ、フリウリ地方の海辺の地元料理─日本のイタリア魚介料理のイメージに近い─を愚直に追求しているだけだ。
 だが、一言で言うなら、どの店でも見かけるレシピを最高の一皿に仕上げる、実力派なのだ。味・盛り付けとも、東京の青山に店を出しても全く引けをとらない料理が、こんな名もなき田舎町で
出されることに驚かされる。

旨みの強いカニのサラダにはマスタードソースを添えて


 ワインは白でお手ごろなものを勧めてもらい、ドーリゴのピノ・グリージョにした。地元フリウリのウディーネ近郊の丁寧な作り手で、国内でも評判が高い。
 魚と野菜のテリーヌのお通しを前によく冷えたドーリゴを飲みながら待っている間にも、自家製らしきおいしいグリッシーニ、フォカッチャについつい手が伸びてしまう。
 アンティパスティには、鮮やかなバジリコのソースが目にも口にも印象的なタコのマリネ、マスタードが程よく効いたカニのグリーンサラダ合え。どちらも、お洒落な皿や盛り付けは、太い木の梁としっくいで固めた内壁の田舎の雰囲気からは想像つかぬほど繊細さだが、それでいて肩肘の張らない寛いだ雰囲気をゲストやスタッフが醸し出している。

パスタ、メイン、デザートのすべてがゲストを飽きさせない

海の味が染みとおったエビのリガトーニ

くパスタも、迷わず海のものにした。エビのリガトーニは、トロ味のあるしっかりしたソースに身の締まったエビがふんだんに使われていて、パスタにまで味がよくしみている。
 アサリのタリアテッレは、手打ち面のこしのある食感とアサリの風味のハーモニーが素晴らしい。自宅で作れるような在り来たりのレシピも、これだけの品質になれば別の料理と言ってもよいくらいだ。

ブロデットのような魚介類の軽い煮込み

 セコンディの2皿も、十分満足のいくものだった。一皿目の名前はあいにく覚えていないが、料理の内容としては恐らくブロデットの一種かと思う。アドリア海でブロデットは、漁師飯に起源とする、港ごとに違ったレシピを持つ、ソテーした魚の素朴なスープだ。元のスープから想像できないくらい上品に仕上げてあり、名前をつけるならさしずめ、スズキ・サバ・甲イカ・シャコのムニエル、魚介のソース仕立て、という感じだろうか。素材ごとに独立して個々の旨みを衣に閉じ込めている上、濃厚なスープもまた楽しめる逸品だ。
 次の魚介のフリット盛り合わせは、よくあるレシピだが、材料の選定が絶妙だ。一口サイズの新鮮な小魚、小エビ、切り分けたイカが、バランスよく散りばめられて、食べ飽きない。

トルタ、ムース、ジェラートの豪華デザート3点盛り

 ここまでの全ての料理は完璧で、完全に満足できた。最後に、トルタ・チョコラータ、アイスクリーム、ベリー類のフルーツソース掛けなどの軽いデザートで口を整えて、帰路に着いた。
 これだけの品質・内容の料理で、席料・ワイン・税など全ての費用を含めて一人約6000円程度とは信じられない。今回はあいにくの悪天候であったが、機会があれば是非天気がよいときに訪れてみたい。海に面した素晴らしいテラスにテーブルが並べられるという。

Risorta(リゾルタ),
Riva De Amicis 1/A , Muggia, 34015, Italy., (-->地図66
Tel: +39 040 271219,
店舗URL: http://www.trattoriarisorta.it/,
紹介URL:
営業時間: 昼・夜
休日: 日夜・月休、1月前半に冬休み・8月後半に夏休みあり
カード可,
ムッジァの旧港の桟橋にある2〜3軒のレストランの一つ。

2010.7.25掲載