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シチリアのマンマの味を味わうならこの店
La Tettoia
ラ・テットイア
(カーポ・ドルランド −イタリア)♦
見落としてしまいそうなエントランス

これがこの店の表札

本人観光客にあまり注目されていないシチリア北東部は、イタリア人には人気のスポットだ。多くの巡礼客・参拝客で賑わうティンダリのサントゥアーリオ(記念堂)の西には、ビーチリゾートのカーポ・ドルランド(Capo d'Orlando)がある。見るべきものもない静かなリゾート地だが、本物のシチリア家庭料理に興味があるなら、町外れの山の中にあるラ・テットイアを訪れてみたい。

   通用口と勘違いするようなそっけない入口

 国道113号は海岸沿いの市街地を避けて、寂しい山腹を走っていく。道を失ったかと不安になってくるころ、ナーゾ(Naso)への分岐が現れるので、道標に従い山を登っていく。カーブの連続する道はみるみる高度を上げていくが、程なく何もない山中に看板を見つけ、脇道に入る。

海の眺めが素晴らしい緑に包まれた斜面のテラス

南イタリアの島でよく見られる、大きく張り出したテラス










 行き着いたところは緑に覆われた農家のようなところ。余りの人の気配のなさに、閉店では、と心配になるが、木々の合い間を進んでいくと十数卓のセッティングされたテーブルが並ぶテラス席が見えてくる。山の中腹にまで登った位置にあるので、青い海岸線の景色が美しい。この素晴らしいテラスは、レストランの名前の由来でもある「テットイア」(大きな庇・張り出し屋根)で覆われた風通しの良い空間だ。

 奥をのぞいてみると、かすかに物音がする。誰かいるようだ。ゆっくりと出てきた老人に食事ができるか聞いて見ると、大丈夫とのこと。ようやくここで食事ができることが確認でき、安心した。しかしここは、スローフードガイドを始め、数々のガイドブックに名を連ねる名の通った店なのだ。一家で切り盛りするこの店の料理は、決してグルメではないが、シチリアの海の幸、山の幸を活かした、まさしく料理自慢のマンマの味だ。シチリアのレストランを食べ歩いた人であれば、ここの料理がいかにお決まりのレストラン風メニューに毒されていない、貴重な手作りのレシピであるかを感じられるだろう。

シンプルだが素材の良さが光る手作り風マンマの味

 お勧め13品を盛り合わせたアンチパストは家庭の味

元の人の食事時間は日本より2時間は遅いので、店には徐々に客が入り活気づいてくる。まずアンチパスト盛り合わせを頼むと新鮮な野菜・ハム・チーズを使った13品を少量ずつ盛り合わせた皿がブルスケッタ用のガーリックパンと共に運ばれてくる。どれも手作りで自然で穏やかな風味なので、どんどん食べられる。これ全部で僅か5ユーロ(700円)とくればお値打ちの一皿だ。赤のハウスワインで食が進む。


 本日のスープはおなか一杯になる食べる一皿

 プリーミ(一皿目)には、ムール貝とアサリのスパゲッティ、マッケローニの詰め物、本日のスープを注文した。
 スパゲッティはシンプルなので、貝と野菜の鮮度が命。コッツェ(ムール貝)の味の濃さがパスタを引き立てる。マッケローニの詰め物は、うす切りしたナスの容器にトマトソースで合えた長いパスタを詰めて焼き、チーズを振りかけたもの。周りが硬く中がプチプチした食感は、ちょっとのり巻きのような感じもする。普通のリストランテではなかなかお目にかかれないシチリアの家庭料理なのでぜひ試してみたい。

 マッケローニの詰め物は、ナスの覆いの中にパスタがぎっしり

 本日のスープはミネストローネだったが、日本のレストランとは全く違うものと思ったほうが良い。イタリアではスープ(suppa:ズッパ)は食べる料理で、極端な場合、液体が全くない場合すらある。この店の家庭風のズッパは、トマトやズッキーニを中心にフェンネルなどで風味付けした野菜の煮込みソースにタリオリーニのようなパスタを加え汁が少なくなるまで煮込んだもので、薄味だが旨みの良く出た野菜の味の微妙なバランスがよい、農家風の一皿だった。

庭で摘んだばかりのとびっきり甘い無花果(いちじく)

 スズキのグリルはただ焼いただけなのに火の通りもちょうどよく最高のセコンド

コンディ(二皿目)は"〜 alla brace"のオンパレード。肉や魚のシンプルなグリルだ。かなりおなかが一杯になっているので、今日入荷している魚を見せてもらい、小さ目のスズキのグリルにした。軽く塩を振って焼いたものをレモンをかけて食べる。そんな単純な一皿も、新鮮な素材と山のすがすがしい空気のせいで、間違いなくおいしい。






 黒々として驚くほど甘い摘み立てのイチジク

 短い料理名が並ぶ素朴なメニューのなか、下線つきでひときわ強調されているのが「採りたてのいちじくとサボテン」。日本では例えばスーパーの店頭で「朝どり卵」などと表示されているように、強調語を被せるのが普通だが、イタリアでは異例なことだ。その自慢の一品をデザート取ってみた。確かに甘い。その黒々としたイチジクは臭みがなく、今まで食べたことがないほどの甘さだった。敷地内に生えている木から、注文を受けてから取って来たものに違いない。

 まるでアグリツリスモのような雰囲気の隠れ家のようなリストランテ。高速道路のすぐ近くで、観光ツアーでは触れることのないシチリアの一面に出会うことができるのが、イタリアの食の奥深さだ。

La Tettoia(ラ・テットイア),
Contrada Certari, 80 Capo d'Orlando (ME), Italia., (-->地図34
Tel: +39 0941 902146,
店舗URL:
紹介URL:
営業時間: 昼、夜
休日: 月曜(7〜8月を除く), 10月の2週間
カード可,
街の南端を走る国道113号を行き、カーポ・ドルランド(Capo d'Orlado)にある交差点で国道116号に入り約1.5km。看板に従い脇道に入ってすぐ。鉄道駅からも2km余りなのでタクシーですぐ。

2006.1.6掲載