"地中海,キプロス,クリオン,kourion"
地中海を望む高台の古代遺跡
Koúrion
Κούριον
クリオン
(キプロス)♦
海を臨む高台の古代都市

っぽく暗いイメージが強い遺跡が多いなかで、クリオンはまるでリゾート地であるかのような明るい印象の珍しい遺跡だ。
 それは、目の前に真っ青な地中海が広がる高台という、その立地のためであろう。
 紀元前12世紀頃にギリシアのペロポネソス半島のアルゴスの住民が入植したのが、町の始まりのようだ。古代ギリシアの都市国家として栄え、ローマ時代にはクリウム(Curium)と呼ばれる立派な都市を形成した。現在修復を受け見学できるのは、主にその頃の遺跡だ。

再建された劇場。広大な海を背景とした素晴らしい構図。

 遺跡は長さ3キロに渡って点在しているが、大きく2つの部分に分かれている。一番目を引くのは、壮大なローマ劇場だ。
 修復された観客席に座り、青い地中海を背景にした舞台を眺めているだけでワクワクしてくる。
 公衆浴場の綺麗に修復されたモザイクもすぐ近くだ。
躍動感のある剣闘士の鮮やかなモザイク
 ここから緩い坂道を10分弱上るとバジリカ、アゴラ、砦などがある遺跡が密集した一帯に出る。
 海に浮かぶような廃墟となった石材は、自然だけが持つことのできる永遠を感じるのに相応しい。
 この広い領域はようやく発掘が終了したばかりで、古代建築の土台や建材が手付かずのまま並んでおり、復元されていないだけにある種の無常感が漂っている。

素晴らしい眺望のモザイク。海を見晴らすヴィラがあったのだろうか。
 真っ青な海を見晴らすテラスのモザイクは、古代の富豪のヴィラがあったのだろうか。
 この近辺はまだ発掘が続いており、今や遺跡は国道にまで達している。その先にも続いているのだろうか。
 ここからは出られないので、先へ進むにはいったん丘の下の入口から出場して迂回し、車で移動する。

奥まった山の方にあるアポロンの聖域

 途中、広大な競技場などを見学しながら、アポロンの聖域(The Sanctuary of Apollo Hylates)に向かおう。この遺跡のアポロン神には、Hylates(ギリシア語でylatis−森)という修飾語がつくことからも分かるように、海を感じるクリオンと対照的に、こちらは高原の緑の中にある。
 城壁に囲まれた聖域内の遺跡は規模こそ小さいが、修復された神殿の柱の存在感は圧倒的で、聖所の威厳が感じられる。
 クリオン遺跡は、キプロス第二の都市レメソス(リマソル)の東約10kmにある。この一帯は英国領アクロティリ・デケリアに含まれるので、あちこちに建つ英国空軍の巨大なアンテナを除けば、開発が一切行われておらず、素晴らしい自然環境が保たれている。
 なお国境管理等はなく、基地関係を除いた一切の活動は行われていないので、キプロス国内のつもりで訪問することができる。