"地中海,クロアチア,ドゥギ,テラシュチツァ,telascica"
島の自然を手付かずのまま保護する
Telašćica
テラシュチツァ自然公園
(クロアチア)♦
複雑な幾何学模様を描くテラシュチツァの入江

豊かな島ドゥギの南端近くの町、サリ。町から先の先端部一帯は、テラシュチツァ自然公園に指定され、切り立った崖と天然の港のように深く切れ込んだ入江がそのまま保護され、野生の動物・鳥・海の生物の楽園になっている。
 同じ海域のコルナティ国立公園と接しており、両者を合わせて海上から訪れるのが一般的だが、自然公園へは海路のほか陸路の入口もある。公園のホームページでは自家用船による海路での入場を推奨しているが、手軽なのは陸路の方だ。
 自然公園への公共交通機関はなく、自家用またはレンタル船か、大陸からフェリーで運び込んだレンタカーでの入場が便利だ。炎天下のおよそ8km×4km四方の広大な公園を巡るのは、体力に自身がない人にとっては、徒歩では危険ですらある。少なくともバイクか自転車を使った方が良い。自然公園の領域を航行して船から見るだけの遊覧船ツアーもあるようだが、肝心のポイントには必ずしも立ち寄れないようだ。
 陸路の入口までは、町から2km弱で遠くない。しかし入場料を払い進んでも、広い園地だけあり、暫くは炎天下の全く何もない草地が続く。

グルバシュチャックから眺める、崖とコルナティ諸島

 車を1kmちょっと走らすと、ようやくマグロヴィッツァ(Magrovica)浜の水辺が見えてくる。さらに4〜5km走るとグルバシュチャック(Grpašćak)だ。標高146Mの山頂は電波施設があり、360℃の素晴らしい展望だ。細い岬上に突き出た地形の上にあり、海側はこの付近で最大規模の百数十メートルの崖となって落ち込み、反対側は幾何学的に入り組んだ海岸線になっている。ドゥギ島から続くコルナティ諸島の、白い円錐型の島々の連なりが面白い。
 尾根に沿って続く遊歩道を数分だけでも岬の方に歩いてみると、真っ白な崖の一端を垣間見ることができる。この崖を下から船で見上げるのが、遊覧船のメインメニューだ。

鏡のように静かなミール塩湖
 自然公園の中心へは、自然保護のため一般車は入れない。ゲート前に車を置き、入江沿いの涼しい松林を歩いて進む。放し飼いのロバが三々五々通っていくのを見て、昔の島の様子もこうだったのかと想像する。
 ミール(Mir)浜は公園の中心地で、簡単なコテッジやレストランがあるので、滞在することも可能だ。大きな桟橋があり、団体客が上陸し、食事できるようになっている。

園内を自由に行き来する放し飼いのロバ
 さらに松林を数分行くと、ミール塩湖(Slano Jezero Mir)だ。周りを緑の山に囲まれた長径およそ1kmの鏡のように静かな湖を見ていると、まるで高原の避暑地にいるような気分になる。だが、湖水は塩辛く、湖底は岩の割れ目を通じて海に繋がっているという。
 塩湖から岬に掛けては、トレッキングルートが続いている。丸一日の時間があれば、小さな丘やビーチを訪ねて、出かけてみるのも良いだろう。