「地中海生活」 1999年 秋号 ( 8月12日発行 通算第15号 ) P.2
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 また反対側の小さなテラスからは、カテドラルが間近に見えます。信仰心の厚いマルタでは、どんな小さな村にも必ず立派なカテドラルがあります。


 3階建ての建物の広いルーフテラスから、朝陽で染まるマルサシュロックの漁港がかいま見えます。


 この建物の1階はオーナーが経営するこの漁港で1軒の食料品店になっており、住むには大変便利なところです。
 店の脇の小さな白い扉が、この住居の入り口になっています。

 今、この漁港の生活を楽しむために、空住宅を数日間借り切ってひとときの住民として暮らしているところです。

 朝とはいえ、陽が高くなってくると暑さを感じるようになります。ルーフテラスの日陰の部分で、市場と食料品店とで買い揃えてきたパン、ハム、ヨーグルト、オレンジジュース、スイカを並べ、コーヒーを沸かして朝食にします。



Top; Port in morning, Marsaxlokk
The second; Cathedral, Marsaxlokk
The third; Breakfast in roof terace, Marsaxlokk
Bottom; Apartment and 'Mathew's Food Market', Marsaxlokk




 今はこの静かな入り江は、歴史の節目には表舞台に登場する地中海中央の要衝の地でもありました。
 武勇の誉れ高かった聖ヨハネ騎士団国が、ついにナポレオン率いるフランス軍の上陸を許し滅亡したのも、また1989年アメリカとソ連が冷戦終結をうたったマルタ会談が行われたのも、この湾内でした。

 マルサシュロックとは、マルタ語で「シロッコの港」、つまりシロッコ(低気圧の通過に伴い、サハラから吹きこむ熱く湿った風)の時の風よけの港、という意味です。
 その名の通り、波のない静かな湾内には漁船がぎっしり停泊し、その湾に沿って典型的なマルタ式である、2階建ての長屋のような漁師の家々が並んでいます。


 この島は、ヨーロッパであると同時にアラブでもある、まさに地中海のど真ん中にある島であることが良くわかります。

 漁船はルッツィと呼ばれており、どれも色鮮やかに塗られています。舳先のすぐ下には、リアルな目の彫刻が彫りつけられています。
 これは紀元前のフェニキア人に由来する伝統で、東地中海各地にお守りとして伝えれています。漁船についている目は、悪魔から漁師を守る役割を果たしているのです。

 また港に揚げられたローマ文字の看板は、アラビア語の方言であるマルタ語でかかれています。



Top; Marsaxlokk
The second; Maltese houses, Marsaxlokk
The third; 'Luzzi', Marsaxlokk
Bottom; Marsaxlokk

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