界的な観光地となったサントリーニ島。20年前には田舎町だった島の中心フィラは、今やシーズン中ともなれば喧騒の真っ只中だ。
一方崖っ淵から下った急傾斜上に、隠れ家のような絶景のホテルや個人のヴィラが点在している。
また都会にあってもおかしくないような垢抜けたショップでは、島に住みついた芸術家たちの素晴らしい作品がリーズナブルに入手できる。それを見て回るのも楽しみの一つだ。
に一本入ると、土産物、ギロ(ギリシア風ファーストフード)、食堂などの店が並び、バックパッカーや地元民の生活の場になるのが面白い。
また名物タヴェルナ「ニコラウス」があるのもこの辺だ。1987年シーズンオフの訪問時には、ただ一軒やっている食堂だったが、いまや町を代表する安くて美味い食堂として大盛況だ。
百メートル下の港へと、一本のつづら折の道が延々と続いている。水深が深く、地形の関係で波も静かな港は、たいした港湾設備もないのに大型クルーズ船が入ることができる。
ロバは港だけでなく、車の入れない一帯への、建築資材等の荷運びに重宝されている。
シー・ビュー(海の見える)の部屋を希望するなら、ホテル選びは念入りに行いたい。この町の崖沿いの絶景地帯は、個人の別荘か、営業用のレストランなどで占められており、ホテルは極めて少ない。シーズン中は、よほど前もって長期宿泊の予約を入れるのでなければ、取れないだろう。 フィラと同じ地形にある隣町のフィロステファニ(Firostefáni/Φηροστεφάνι)、さらにその隣のイメロヴィグリ(Imerovígli/Ημεροβίγλι)あたりであれば、若干の可能性があるかもしれない。その場合も、法外な部屋代を覚悟しておいたほうが良いだろう。
ブドウ色に染まる静かな水面に、多島海のように黒い島影が浮かび上がる。時おり横切る大型クルーズ船が、青白い光を放ちながら、色紙のような水面に一條の切り込みを描いていく。 崖沿いの通りから僅かに下った一帯は、レストラン、カフェ、タヴェルナが占領している。
その時間、遮るものがない展望を欲しいままにするテラスで、ワイングラスを手に新鮮な魚料理を味わうというのは、最高の贅沢だ。 特に夏の遅い夕日が沈むとき、青から黄、赤、紫、そして暗黒へと、刻々と変化する海を眺めながらのディナーは、忘れがたい思い出となるだろう。 ただしこの一帯のレストランは、お値段も都会並だ。 食事の後も日付が変わらぬうちは、カフェやショッピングなど、まだまだ存分に楽しめる。近くの町に泊まったとしても、終バスが遅くまであるので心配ない。
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