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建国当時、ギリシアの首都だった町
Náfplio
Ναύπλιο
ナフプリオ
(ギリシア)♦♦
Centro
Storico

赤い屋根の旧市街沖に浮かぶブルジ島

国当時のギリシアの首都は、ナフプリオであった(古代名「ナフプリオン」と呼ばれることも多い)。
 古代から中世にかけて活躍したギリシア人が独自の国家を持ったのは意外と新しく1830年のことだが、中世以後忘れられたように小さな都市であったアテネに対し、ナフプリオは支配者のトルコやヴェネチアの拠点として繁栄を極めた。

シンタグマ広場から見上げる、聳え立つパラミディ要塞。左下は旧モスク。

 古代の夢の再現を期して1834年にギリシアの首都はアテネに遷都し、また輸送手段が大型船や鉄道に変わるのに伴い、港の水深が浅く地中海航路からも外れたナフプリオの役割は終わった。
 現在のナフプリオの姿は、2回目のベネチア領時代の1686〜1715年に形作られた。アルゴリア湾に長く突き出した岩山の上にあった古代のアクロポリスの場所が要塞となっていたが、守りをさらに強固にするため背後の高さ216メートルの丘の上にパラミディ要塞を建築した。町からの857段の石段を登る道に加え、今では車で行くこともできる。
 要塞の大きさは半端ではない。純粋な軍事施設であるにもかかわらず、旧市街がすっぽり入るほどの面積があり、丘の稜線を覆うように配置された8つの要塞の複合体として設計されている。それぞれは迷路のように複雑に繋がっており、現代の観光客もまた出口を見つけられず右往左往するほどだ。町からの入口は一つだけ、階段が続く狭く長い道のりで、幾重にも防御が張り巡らされている。町を威圧するかのように睨みを利かせている。

パラミディ要塞からの、旧市街とアルゴリア湾の雄大な眺め

 パラミディ要塞からの眺めは本当に素晴らしい。目の前にはジオラマのセットのようなナフプリオ旧市街、海に浮かぶブルジ島、右手にはアルゴスに向かって延びる海岸線、左は目も眩む崖となって海に落ち込んでいる。城壁の上を歩けば、思わず足元がふらついてしまうほどの迫力だ。

ブルジ島要塞は、まるで海に浮かぶお城のようだ

市街の見所は、岬の先端のほうに集中している。岬の南側はアクロナフプリア要塞の高みになっており崖となって海に落ち込み、一方北側の斜面は緩やかに海へと続く市街地になっている。先端部の海岸沿い、アクティ・ミアウリ通りはプロムナードになっていて、カフェのテーブルが並ぶ落ち着いた一帯だ。その一角からブルジ島(Bourtzi/Μπούρτζι)への渡し舟が出ている。専用の乗船場やスケジュールはないようなので、それらしい船を捜して尋ねてみるとよい。

夕食の客を迎える準備が整ったスタイコプル通りのタベルナ

 ブルジ島は旧市街の沖500メートルに浮かぶ、長径100メートルほどの小島で、ヴェネチア時代に要塞化され、ちょっとした海上の城のように見える。この島を杭にして海岸と鎖で結んで封鎖し、町を敵から守るのだ。対岸に見るパラミディ要塞を背負ったような旧市街の風景は眺めておきたい。
 できればゆっくりしていきたいが、無人の島に長居するわけにも行かず、渡し舟の船主が指定した時刻に遅れぬよう船に戻り、町へと引き返す。

アギオス・スピリドナス教会のイコン

岸のプロムナードを進んで途切れるあたりを少し山側に入ると無料のエレベータがあるので、それに乗ってアクロ・ナフプリアの城塞に上がる。
 城塞内は砦のように聳える近代的なクセニア・ホテルに占拠されているが、パラミディ要塞に向かって歩いていくと、本来の要塞入口付近で、城壁の上から海の前に広がる赤い屋根の旧市街の家並みが大きく広がるビューポイントに出る。
 ヴェネチアの遊翼の獅子が刻まれた、正規の入口の門をくぐって、再び市街に戻ろう。

 ナフプリオは、ギリシアで最もイタリア的な町だ。それだけヴェネチアの影響が大きかったことに加え、この要塞都市に大きなダメージを与えるような攻撃は困難だったので古い街が守られたためでもある。

アクロ・ナフプリアから眺める、夕照に輝く旧市街


 町の中心は市民のいこいの場でもある、大きな長方形のシンタグマ広場だ。旧ヴェネチア軍施設(現在は博物館)、旧モスクなどの主要な建物が囲んでいる。
 そこからアギオス・ゲオルギオス教会へ向かって伸びるスタイコプル通り(Staikopoulou/Σταϊκοπούλου)が一番の繁華街だ。

美しくライトアップされた夜のパラミディ要塞は、巨大なイルミネーションだ。


 市民が必要なものは、買物から食事まですべてここで揃う。観光客にとっても土産物選びや、地元民が通う美味しいレストランを見つけるのに大いに役に立つ。

通りは夜遅くまで賑わう



 夏の日が傾き始める夜8時頃には、タベルナの席を確保したい。食事が終わった頃、人通りはますます激しくなり、あちこちに陣取った大道芸の人だかりが、それに拍車をかける。