エ グゾ・マーニと呼ばれる、イオニア海に面して松やオリーブの緑豊かなマーニ地方北西部の山腹に、人口数百人ほどの小さな集落が点在する。
エグゾ・マーニの村はその多くが、明らかにギリシア語らしくない奇妙な響きの名前を持っている。ここプラツァやすぐ隣のノミツァもそうであり、また少し南のイティロやアレオポリもそれぞれ、ツィパ、ツィモヴァなどの別称を持っている。これはかつてエグゾ・マーニがスラヴ人のスパニス(Spanis)家の配下にあった証である。
19世紀まで隔離されていたこの地域の村には、昔のギリシアさながらの生活が残されている。特筆すべきは、中世初期のギリシア正教の小さな聖堂群だ。石やレンガを積み上げた一部屋だけの素朴なつくりで、中は色鮮やかなフレスコ画のイコンで覆われている。
たいていは鍵が掛かっているため普段は中を見ることはできないが、雰囲気はドアや窓の隙間から窺い知ることができる。
カルダミリからアギオス・ニコラオスにかけて海岸を走っていた幹線道路は、地形が険しくなるため山の斜面へと上がって行き、その先テナロ岬まで二度と海岸線に下りることはない。
プラツァは、標高400メートル近くまで登って最初に出会う集落で、海に開けた台地上にある明るい穏やかな山村だ。西側の入口から入ってすぐ、アギオス・イオアニス(Agios Ioannis/Αγιος Ιωάννης)がある。白茶けた石造りの15〜16世紀頃の端麗な正教会で、これでもマーニの教会の中では立派な部類に入る[写真上]。
集落の中の小道を東へ進むと、もう一つの村への入口から入ったときに行き着く小さな広場に出る。そこから幹線道路方向(つまり、北)に50メートルほど進んだところに、民家に埋もれるように小さな、アギア・パラスケヴィ(Agia Paraskevi/Αγία Παρασκευή)がある。[写真下]
聖堂というより粗末な小屋のような建物で、史跡を指し示す道標がなければ気がつかないだろう。こちらは幸いドアが開いているので中に入ることができる。長身の人なら頭上が気になるほどのサイズで、内部には礼拝に使う道具や飾り物がギッシリと詰まっている。
村はずれのアギオス・デメトリオスまで歩くと、海岸線の眺めが素晴らしい。
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