巨岩「ロッカ」の麓に広がる可愛らしい街並み
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いかにも南イタリアらしい石畳のこじんまりとした古い街並みと、まるで天然の塔であるかのように聳え立つ岩山。海岸一帯の穏やかなビーチ。チェファルーは、まさにリゾートとしての条件を見事に兼ね備えた、シチリアでも有数の保養地だ。夏のシーズン中は、予約なしで宿を探すのは一苦労ほどの人気ぶりだ。
この一帯は海岸線にまで山が迫り、狭い海岸線に沿って高速、鉄道、国道が並行して走る風光明媚な地域だ。東西どちらから近づいても、まず海岸の巨岩「ロッカ」(La Rocca)に気がつくはずだ。特に西のパレルモ側からアクセスするときは、そのふもとのかわいい町を従えた絵のようなチェファルーの姿にまず心を奪われるに違いない。
大聖堂は街の建物の中でも群を抜く存在感
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チェファルーを訪れたら、まずは大聖堂を訪れたい。12世紀のノルマン様式の2本の鐘楼を擁する堂々たる雄姿は、街を象徴するのにふさわしい大建築だ。大ドーム下の厳しい表情で我々を見つめる全能のキリストの金に輝くモザイクは必見だ。
大聖堂前のドゥオーモ広場一帯は、中世の町がそのまま残された貴重な空間で、市民が日用品や食料品を買う商店や、短冊状の細い生活感の漂う路地が連なっている。夏の間は、日中ビーチで過ごした人々が繰り出す夜には、飲食店や土産物屋が店を開きたいそう賑やかになる。
見事なキリストのモザイクは必見
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路地裏の生活シーン
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海から見る要塞化された街並み
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旧市街の一角から海に突き出たマルキアファーヴァ要塞から、海から眺める街の景色を楽しみたい。海岸沿いの家々は要塞のように立ちはだかっており、かつては敵の上陸を防ぐ城壁の役を担っていた。和やかなチェファルーの街とは明らかに異なるその壮観な姿に、街の違った一面が感じられる。現在それらの建物は商店やレストランに使われており、海へと突き出した船着場のようなテラス席が面白い。
今でも水が流れている中世の洗濯場
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小さな漁船用の港の脇には、海からの入口である海の門(ポルタ・ディ・マーレ)がぽっかり口をあけており、さらに進むと中世の洗濯場が残っている。湧き水が流れ込むオープンエアのこの施設には、いくつもの洗濯石が配置され、住民が自由に使うことができる。最近まで実際に使用する人がいたというが、観光客がひっきりなしに訪れる現在はどうだろうか、訪問時には住民は見当たらなかった。
山腹から見下ろす忘れがたい街の全景
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観光客の多くは、ビーチ目当てにこの街を訪れる。先の漁港の防波堤の地点から、シチリアでは珍しい砂浜のビーチが、緩い弧を描きながら遥か数キロ先まで続く。どこに陣取っても岩山と大聖堂が視界に入り、景色はすこぶる良い。海岸沿いのプロムナードは夏季にはいつでも賑やかだ。絵になるのはビーチからの景色だけではない。裏山のどの地点からも、青い海を背景にした、ロッカと大聖堂は本当に素晴らしい構図を提供してくれる。朝の鋭い光線に浮かび上がる町の輪郭、昼の青い海の色、夕景に沈む街の明かり、どれも捨てがたい。一番手ごろに楽しむには、町内を抜ける国道から一本山側、駅の裏手を迂回する道に車を走らせると良い。
ロッカへの登山道の途中、展望台にて
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しかしできれば上ってみたいのが、あの岩山、ロッカだ。下から見上げるロッカは近づくものを強く拒むような険しさで、登れる方法があるとは思えない。ところが意外にも、ガリバルディ広場裏手の住宅地から、険しい岩場を避けて一般人でも登れるハイキングコースが整備されている。途中の展望台までなら20分程度、山頂までもゆっくり登って1時間はかからない。
最後の人家を過ぎて森に踏み込んでしばらく行くと、渓谷の地形を利用して設置された砦の入口にあたる城門を通過する。小さなサンタ・アナ(S. Anna)礼拝堂道への分岐に差し掛かるが、見所が2つあるのでぜひ寄り道していきたい。
山頂から眺めた街を包み込むティレニア海の蒼
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まず礼拝堂を過ぎて僅かの林の中に、なにやら妙な石組みがある。道標も無く見つけずらいが、紀元前4〜5世紀に再建されたディアナ神殿だ。そこから真下に下るとビサンチン時代の城壁が現れ、夜には点灯される巨大なクロスの脇から、まるで足元に見下ろすような崖の上から、大聖堂と旧市街の素晴らしい眺めを楽しむことができる。景色を堪能したら分岐に戻り、時間があれぱ山頂を目指そう。ここからは、草の斜面をただただ登っていく。しかし雄大な景色の眺めを従えながら、心地よい風を受けての登山は、夏の真昼でもなければ、決してきつくは無い。
山頂は意外と平坦で、中世の砦の廃墟が残っている。その遺構の上を飛び跳ねながら、360度の景色を楽しみたい。特にそれまで見えなかった、東側の港側の景色が印象的だ。
旅情溢れる夜の旧市街の表情
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熱い夏の午後をビーチゆっくり過ごした後は、街でディナーを楽しみたい。肉の他、魚を売り物にするレストランもあり、多少観光客向けではあるが、地元のネロ・ダヴォラ種の赤ワインと共においしい数々の料理を味わえる。
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