から見ると、どこにでもある谷間の町の一つような感じがする。だが、一歩足を踏み入れると、そこはまるでダンジョン(地下迷宮)のような薄暗い世界。
谷間のわずかな平地に開けた新市街から、中世の石橋を渡った対岸の急峻な山の斜面に作られているのが、ドルチェアクア旧市街だ。 「甘い水」を表す町の名に興味を引かれるが、起源を辿るとラテン語か、ケルト語の地名が訛って、そんな発音になったらしい。 現在の城は、13世紀に町を手に入れたジェノヴァのドリア家が建設したものだ。戦乱と地震で崩壊し一時は打ち捨てられたが、最近になって観光用に、一部修復されている。
山の中腹から川面にかけて、中世の古い家々が密集し、最上部には村を支配するかのように、お世辞にも優雅とは言えない砦のような城が、覆い被さっている。 歩道橋の階段を上るかのような傾斜のきつい太鼓橋を渡ると、いよいよ旧市街だ。 右手には、典型的なリグリア風の地区教会、サンタントニオ・アバテ教会があり、旧市街で唯一陽光に溢れる一角を作り出している。 |
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から城までは、曲がりくねった一本道ヴィア・カステッロ(Via Castello)が続いている。
隣家と横同士結合している上、道の上に渡したバットレス(アーチ状の支え)で向かいの建物とも互いに支えあっている。 道路上に建物自体が建設された部分も多く、その中を暗く曲がりくねった道がぶち抜いている。
この道を歩いていると、時折見える空が、とても貴重なものに思えてくる。実際、陽の高い時間であるのに薄暗く、通り沿いの食堂や土産物店は、一日中電気をつけている。 通りに面した入口が、実は遥か下方の建物の4階部分であったりもする。どこからどこまでがどの建物で、道がどのように続いているのかよく分からないほどで、まるで3次元の地下迷宮さながらだ。
そうは言っても旧市街は小さいので、抜けられなくなる心配は全くない。全ての道を歩き尽くすつもりで、この迷宮を楽しんでみたい。
もう少し進むと、城と町とを上から望む山の斜面に到達する。下から見た威圧的な城の姿と違って、城もこの町ももはや過去の遺物であることが、強く印象付けられる。 |