"地中海,イタリア,プーリア,オストゥーニ,ostuni"
丘の上からアドリア海を見下ろす白い街
Ostuni
オストゥーニ
(イタリア)♦
Centro
Storico

アドリア海に映える白い要塞のような町

ストゥーニとの劇的な出会いを迎えるのは、サンヴィート・デイ・ノルマーニ(S.Vito dei Normani)の方から向かっていった時だ。
 アドリア海を見下ろす台地の上を走る道路が、徐々にオストゥーニに近づく。新市街に差し掛かって、ヴィットリオ・エマヌエーレ通り(Corso Vittorio Emanuele)に入り、ふと右側を見ると、真っ青な海に向かって張り出した丘の上に、雪のように真っ白な旧市街が現れるはずだ。
 頂上には優美な大聖堂が、そして中腹には堂々たるマジョルカ焼きのクーポラを擁するモナチェッレ教会が、アクセントを与えている。


バラ窓が美しい優美な大聖堂

 程なく道は、リベルタ広場(Piazza della Libertà)に出る。立派な市庁舎前のこの広場は三角形をしていて、きれいに舗装され敷き詰められた石の片隅には、カフェなどのくつろぎの場となっている。
 この先の旧市街は、崖となって平野部に落ち込んでいるため、この広場からが旧市街への一般的な入口となっている。車は入れないので徒歩で行こう。
 旧市街は、直径300メートルほどの大きさで、丘の上のカテドラルを中心に斜面にまぶしいほどの白い家々が密集している。あまり観光化されてはいないとは言え、曲がりくねったヴィア・カテドラーレ(Via Cattedrale)を登っていくと、両側にはちらほら土産物屋やレストランなどが見られる。
 道は、昔修道院であった時の呼び名に因みモナチェッレとも呼ばれる、サン・ヴィート・マルティーレ教会(Chiesa di San Vito Martire)のところで、大聖堂を見下ろす壁に突き当たる。
 そのまま進まずにいったん戻り、反時計回りに等高線に沿ってとぐろを巻くように周回する路地に入って見ると面白い。


目が眩むほどの白さの町並み

を伸ばせば届くかという気がするほど細い路地は、随所で建物をくり貫いたトンネルになっている。真っ暗闇から突然まぶしい白い世界に放り出されたときの光の強さに、眩暈がするような感覚に襲われる。
 多用されている、外階段やバットレス、そして生き物のように太くなったり細くなったりする路地。というよりむしろ、家々の間の余った空間や広場を適当に繋げて道にしている感じさえしてくる。このあたりはギリシアのキクラデス諸島の町を思い起こさせる町の構造だ。街の名前オストゥーニは実際、ギリシア語の新しい町アストゥ・ネオン(άστυ νέων)から来ているのだ。古代から中世にかけて、このあたりにはギリシア人が住んでいたと考えられている。

旧市街への数少ない入口の一つ、ポルタ・ノーヴァ


 北東斜面まで回ってくると、白い建物の間からアドリア海の青がちらちらと覗くようになってくる。ムルジェ台地に白い町は多いが、鮮やかな海を見下ろしながら散策できるのがこの街の特徴だ。
 道は街の斜面を一回りして、頂上の大聖堂に近づいてくる。ブリッジをくぐって司教館の脇を通り、正面の大きなバラ窓に近づいていく。曲線を組み合わせた柔らかいが力強い独特のファザードに思わず見とれてしまう。

 旧市街に入るいくつかの門のうち、ポルタ・ノーヴァは比較的良く保存されており、分厚い城門をくぐって市内に入っていく雰囲気が実感できる。この門の脇の要塞内が、レストラン「ポルタ・ノーヴァ」となっており、遥かなる海を眺めながらシーフード料理を味わえる気のきいたスポットとなっている。