見落としてしまいそうなエントランス | ||||||||
本人観光客にあまり注目されていないシチリア北東部は、イタリア人には人気のスポットだ。多くの巡礼客・参拝客で賑わうティンダリのサントゥアーリオ(記念堂)の西には、ビーチリゾートのカーポ・ドルランド(Capo d'Orlando)がある。見るべきものもない静かなリゾート地だが、本物のシチリア家庭料理に興味があるなら、町外れの山の中にあるラ・テットイアを訪れてみたい。
行き着いたところは緑に覆われた農家のようなところ。余りの人の気配のなさに、閉店では、と心配になるが、木々の合い間を進んでいくと十数卓のセッティングされたテーブルが並ぶテラス席が見えてくる。山の中腹にまで登った位置にあるので、青い海岸線の景色が美しい。この素晴らしいテラスは、レストランの名前の由来でもある「テットイア」(大きな庇・張り出し屋根)で覆われた風通しの良い空間だ。 奥をのぞいてみると、かすかに物音がする。誰かいるようだ。ゆっくりと出てきた老人に食事ができるか聞いて見ると、大丈夫とのこと。ようやくここで食事ができることが確認でき、安心した。しかしここは、スローフードガイドを始め、数々のガイドブックに名を連ねる名の通った店なのだ。一家で切り盛りするこの店の料理は、決してグルメではないが、シチリアの海の幸、山の幸を活かした、まさしく料理自慢のマンマの味だ。シチリアのレストランを食べ歩いた人であれば、ここの料理がいかにお決まりのレストラン風メニューに毒されていない、貴重な手作りのレシピであるかを感じられるだろう。 |
シンプルだが素材の良さが光る手作り風マンマの味 | ||||||||||||
元の人の食事時間は日本より2時間は遅いので、店には徐々に客が入り活気づいてくる。まずアンチパスト盛り合わせを頼むと新鮮な野菜・ハム・チーズを使った13品を少量ずつ盛り合わせた皿がブルスケッタ用のガーリックパンと共に運ばれてくる。どれも手作りで自然で穏やかな風味なので、どんどん食べられる。これ全部で僅か5ユーロ(700円)とくればお値打ちの一皿だ。赤のハウスワインで食が進む。
スパゲッティはシンプルなので、貝と野菜の鮮度が命。コッツェ(ムール貝)の味の濃さがパスタを引き立てる。マッケローニの詰め物は、うす切りしたナスの容器にトマトソースで合えた長いパスタを詰めて焼き、チーズを振りかけたもの。周りが硬く中がプチプチした食感は、ちょっとのり巻きのような感じもする。普通のリストランテではなかなかお目にかかれないシチリアの家庭料理なのでぜひ試してみたい。
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