話によれば、怪物ミノタウルスを幽閉するために作られた迷宮(ラビリンス)の宮殿と語られるが、史実は紀元前17〜14世紀頃のミノア文明の首都宮殿であった。
しかしクノッソスの真の偉大さは、その点にあるのではない。宮殿を中心に1万数千人が暮らしたと思われる都市を形成し、宮殿は王族の生活から、政治、産業、宗教、様々の生産や生活の施設までを併せ持った複合中核施設としての性格を帯びていた。宮殿内部には優れた上下水道が、外部には道路、港が整備された。
現在、遺跡で見られる色や形あるものは全て、再建された構造物かレプリカだ。しかし、崩れかけた壁や石畳から、その規模と精巧さが窺い知れる。 クノッソスは、古代文明に興味がない人にとっては、単なる土色の瓦礫の山に過ぎない。イラクリオの考古学博物館で出土品を見学し、ミノア文明の知識を持った上で、詳しいガイドブックを手にゆっくり回るとき、初めて意味を持つであろう遺跡だ。 |