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独自の文化を伝える地中海都市
Houmt Souk
ﺣﻮﻣﺔ ﺍﻠﺴﻮﻖ
フーム・アル・スーク(フームスーク)
(チュニジア)♦♦
Centro
Storico

旧市街の路地

ラブの都市の中でも、フーム・アル・スーク(フランス語でフームスーク)は独特の雰囲気を持った街だ。

 ジェルバ島は、地中海でも有名なリゾート地で、ヨーロッパから団体客を乗せたチャーター便が続々と着陸する。だが彼らはリゾートホテルに直行して専用ビーチで一日を過ごすので、この島は意外にもそれほど観光化されておらず、大陸とは違った地中海のアラブ世界を垣間見ることができる。
 フーム・アル・スークは、スーク(市場)を中心とした旧市街の賑わいと、大きすぎも小さすぎもしない手ごろな街の規模感、それに観光客などの余所者を受け入れる街の雰囲気が、過ごしやすい、ジェルバ島の首府である。

広場のカフェではたいていオレンジジュースが売っている

 街の様子は、ギリシアのキクラデス諸島とも似た、白い家に青いドア、細い曲がりくねった路地、という地中海的都市的な構成だ。紀元前6世紀頃、フェニキア人がもたらした文明の影響を強く受けたものと推測される。独立の気風が強いのは、アラブの一部でありながら周辺諸国との交易や、被占領、海賊行為等を通じて、国際都市として生き続けてきたためであろう。

 緑豊かなチュニジア北部に対し、数百キロ南下したこの島では、乾燥した平らな大地が広がり、砂漠の入口であることが一目瞭然だ。



屋根つきスークの入口

内部は日用品や食品の店が立ち並ぶ



ガラス細工でできた香水瓶、スークの土産物店で

ず訪れてみたいのは、旧市街のスークだ。チュニスやスースなどの大都市のスークと違い、迷っても簡単に脱出できる大きさなので、気軽に歩き回ってみよう。
 屋根つきのアーケード街のような狭い路地の両側には、衣料や雑貨、食料品など日用品を売る店が建ち並ぶ。今はほとんど姿を消してしまった、昭和期の町の市場のようで懐かしい感じだ。所々には、貴金属や絨毯など高価な商品を売る店が混じっている。また陶器やみやげ物など、観光客向けの店もあるので、お土産や記念品を買い求めるのもよい。

広場で大きく商品を広げた陶器の露天商

 スークの中には、トルコ領時代に建てられたフンドゥク(隊商宿)が、ショッピングセンターとして便利に活用されているのが面白い。陶器の大産地ゲラーラが近いので、モンジ・バリ広場を中心に陶器を売る露店も多い。
 隣接して、生鮮市場、香辛料市場、そして港町らしく魚市場もある。この近くに新鮮な魚料理を出す店もある。日本の魚料理ほど洗練された味とはいえないが、それを承知の上試してみるのも良いだろう。

海岸の砦、ボルジュ・エル・ケビルは美しい造形だ

 旧市街のそこここに広場があり、昼間はそのほとんどで露店やカフェが開かれている。地方の手工芸品や名産品を売りに来ているのを眺めたり、甘い菓子やオレンジジュースなどを手に一息入れるのも楽しみだ。
 街の周囲には、トルコモスクを初めいくつかのモスクが建てられている。外敵の侵入に備えて巡らせた塀の中には、小さな数個のドームを持つ真っ白な礼拝堂がある。典型的なジェルバ風のモスクの構造だ。



漁港の風景は、地中海のどこでも同じ

内を一回りしたら、ぜひ1キロほど離れた海岸線の大きな城跡、ボルジュ・エル・ケビル(Borj El-Kebir)に行ってみたい。
 13世紀にアラゴン朝(スペイン)により建てられたものだが、その後トルコ時代に拡大されて現在の姿になった。
 海岸に波に洗われながら経つ赤茶色の広大な砦は、港や海の眺めがよい。

 さらに海岸を1キロほど行くと、漁港がある。赤、青、黄などの原色を使ってカラフルに横のボーダーに塗り分けた船の塗装や、編みを手入れする漁民の姿は、ステレオタイプのチュニジアのイメージには合致しないが、地中海世界では共通の風景だ。
 ここでは、港周辺に無造作に山積みにされた蛸壺にも注目したい。長さ数十センチの壷を海底に沈めておき、住み着いたタコを取る原始的な漁法だ。

シナゴーグ「エル・グリバ」は2600年の歴史を持つ

 時間があればぜひ訪れたいのが、町の約5キロほど南の乾いた大地にポツンと立つシナゴーグ、エル・グリバだ。
 紀元前6世紀からユダヤ人はこの島で暮らしており、彼らの村の一つがフームスークの南の郊外にあるエリアド(Er Riadh)だ。彼らの言葉で、Hara Seghira(小さな村)と呼ばれている。
 その外れにあるエル・グリバは聖地としてユダヤ教徒の巡礼地にもなっており、2600年の歴史を持つ。1920年に建てられた現在のシナゴーグは、礼拝日の土曜を除けば異教徒の見学が許されており、島を訪れるツーリストの多くが訪れる名所でもある。ブルーを基調にしたタイルで飾られた内部は必見だ。
 2002年4月の死傷者を出したテロ集団アルカイダの攻撃にも耐え、現在は厳重な警戒態勢の下で安心して訪問ができる。

夕方になると、露店に代わって出てくるカフェのテーブル

 活動的だった旧市街の路地も、スークや露店が閉店すると人通りは疎らになる。

 街の夜は早いが、広場のカフェだけは、夜遅くまで談笑する人々でいつまでも賑わっている。


夜更けまで談笑する市民