La Mère Germaine -The Mediterranean Life /地中海生活

町の実力ナンバーワンのレストラン

プロムナードですぐ分かる一番美味しそうなレストラン

南

向きに開けた明るい漁村、ヴィルフランシュ・シュル・メール。コートダジュールの小さな港の波止場は、ちょっとしたプロムナードだ。
　親しみやすいながらも、垢抜けたカフェやレストランが建ち並ぶなかの一軒が、1938年創業の老舗、ラ・メール・ジェルメーヌだ。
　サン・ピエール礼拝堂やオテル・ウエルカムに近い、一等地で、鮮やかな緑のオーニングのもと、海に面した前面を広々と開け放っている。


港に面したテラス席

　1938年にジェルメーヌが小さな港に開業したレストランは、分け隔てないもてなしで海の男達の間で評判になる。ついには、米国第六艦隊の母、とまで言われるようになっていった。
　もちろん、毎朝漁に出て取った新鮮な魚を出す料理の評判も高く、南仏に居を構える著名人の常連客をたくさん持つようになった。そのひとりジャン・コクトーがサン・ピエール礼拝堂を鮮やかな色彩に新装したのも、彼女との縁が始まりだったという。

上品なアーキテクチャーに、町を代表する重みを感じる

　ジェルメーヌ亡き後、店を引き継いだレミー・ブルアンは、歴史あるレストランを発展させ、セレブたちもが訪れるコートダジュールに名を轟かす魚料理店の名店を築き上げた。

伝統料理をベースに上品に装飾した品々


元祖の濁ったブイヤベースは濃厚な味
魚専門のレストランだけあってどのメニューも外れがないが、スペシアリテであるプロヴァンス風のブイヤベースは外せない。

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ィルフランシュ・シュル・メールは静かな保養地だ。日差しの強い昼は、夏であれば一番のプロムナードでも人影は疎らだ。涼しげな庇の下に張り出したテラス席で、港の情景を眺めながらゆったりと食事ができる。

ルイユと一緒に頂く

　南仏の典型的なレシピは、日本のレストランとはだいぶ違うので戸惑うかも知れない。魚をトロトロになるまで身まで丸ごと煮込んだもので、透明感がなく赤茶色をしたシチューのような、食べる一皿だ。魚介類のかたまりは全然入っていないのに、味がものすごく濃縮されている。

新鮮なアンチョビのマリネがおいしい

　これに、ルイユというニンニクとトウガラシで味付けしたペーストを、好みに合わせて落とし、パンと一緒に頂くのがオーソドックスな食べ方だ。
　メインでオーダーした場合は、このスープにさらに魚介類が盛り付けられたボリューム感のある一品になるらしい。
　新鮮なアンチョビのマリネもまた、欠かせない。取れたてのイワシを軽くマリネした一皿は、鮮度抜群で、和食の酢しめに通ずるものがある感じだ。
　どちらも良い材料を使わないとできない逸品だ。

カリッ焼き上げた皮までおいしい３種類の魚、２色のソース添え

　軽めのランチのメインは、香ばしく焼いた魚の切身を美しく盛り付けた一皿だ。
　ソースはあらかじめ皿に敷かれたものに加え、小さな容器に入ったもう一種を好みに応じてかけるようになっている。
　オーダーした魚の種類により、皿ごとにソースが違っているところに、細やかな気遣いが感じられる。

見た目にも美しいクリームブリュレ

　デザートもまた、一品ずつ上品に仕上げられてもので、十分満足できるできだった。
　伝統的な南仏の魚料理を、新鮮な素材、心地よい雰囲気、そして美的センスで味付けして出してくれる、全てにおいて水準以上のレストランだった。
　決してミシュランの星付きレストランのような奇をてらったところはないが、このような堅実なレストランが小さな街にさり気なくあるところに、フランスの奥深さが感じられる。


気さくな雰囲気の中にも創業以来の風格を感じる	漁船から上げたばかりの素材を使って