カレから1.5kmほど奥に進むと、乾いた荒地の中にリキアの古代都市ミラの遺跡が現れます。
　古代の観客と同じようにギリシア文字の刻まれた敷石を踏んで、２世紀に作られた劇場に入って見ます。

　当時は海岸線がここまで迫っており、音響効果も考え岩山の斜面を利用したぎりぎりの場所につくられたのでしょう。
　上段の観客席への入り口をたどっていくと、今でもそのまま使えそうな気さえしてきます。

　ローマ劇場の脇の低地には、岩を彫りぬいた、さらに古い紀元前のリキア人の死者の町（墓の町）ネクロポリスが見られます。
　かつて岩山の上にあったアクロポリスとは、対照をなす世界です。

　その墓所群の下には、ローマ劇場の一部だったであろう、彫刻を施した多くの石塊が、無残に崩れ落ち藪の中に埋もれています。

　遺跡管理がおおらかというよりも、整備しきれないほど無数の遺跡が散りばめられた、トルコらしい光景といえるでしょう。

　リキア人のネクロポリスはその装飾技巧の見事さ、保存状態の良さにおいて、見るべきものがあります。
　まだ未調査の墓も多く、リキア地方には遺跡に指定されてすらいないリキア人の墓所が、海辺に、畑地に、山中に、無数に残されています。