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地中海一のラグジュアリーホテル
Châteaux de la Chèvre d'Or
シャトー・ドゥ・ラ・シェーブル・ドール
(エズ −フランス) ホテル♦♦ レストラン
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足元に広がる地中海の青!


海までの標高差380mの絶景

中海一のホテル、と言ってもいいのではないか。シャトー・ドゥ・ラ・シェーブル・ドールは、そう思わせるのに十分なほどの、光と海に溢れた場所だ。
 南仏コートダジュールで、鷲ノ巣村として名高いエズ村の一角、海抜380メートルに位置するホテル前の斜面は、平均35.9゜という崖のような急傾斜で紺碧の海へと落ち込む。そこから見る海の景色は水平線から遥か下方へ広がり、上空に広がる遮るもののない青空と一体化して視界の大部分を占拠する。
 ルレ・エ・シャトーと言えば、世界で一番美しいとされる、フランスを中心としたラグジュアリーホテルのチェーンだ。チェーンのイメージとは裏腹に、一軒一軒のホテルが古城や修道院を改装したもの、最高のリゾートホテルとして建設されたものなど、きわめてユニークで、同じホテルの中でも多くの部屋タイプがあり、しかも最高のもてなしが約束されている、類を見ないホテルの集合体だ。シェーブル・ドールは、間違いなく代表する一軒と言ってよいだろう。



城門下にある駐車場入口まで、車で入れる



村の歩道の道しるべ


 エズ村には2軒の宿があり、いずれも由緒ある宿だ。1軒がこの「シェーブル・ドール」、そしてもう1軒は村の最上部の崖上にある「シャトー・エザ」だ。ロマンティクな絶景のシャトーホテルという点では共通だが、それぞれに特徴がある。


ホテルは、エズの一番海側(案内図の最下部)にある


 「シェーブル・ドール」の特徴は、体全体で感じる上質でゆったりした時間、ではないだろうか。花の咲き誇る広い敷地内のプール、ジャグジーを始めとする多くのリラックシゼーションスペース、ミシュラン二つ星のグルメレストラン、そしてゆったりとした伝統的な造りの客室。リラクシブルであると同時に、ホテルとしての格の高さもまた溢れている。南向きの斜面にあるので一日中陽光に恵まれ、視界は一面の海となっている。


左手がフロント棟の入口。ホテルの建物を村の歩道が貫いている。

 一方の「シャトー・エザ」は、部屋からの抜群の眺めのよさ、適度にモダンテイスト、カジュアルマインドを取り入れた、リーズナブルで心地よい、10室のこじんまりとしたホテルである。南に面した部屋からは一望の海が素晴らしく、西面にあるパブリックスペースのテラスからは、ボリューからヴィルフランシュに掛けての海岸線が美しい。おもな設備は、客室とレストラン、カフェだけ。
 地中海の自然を、体と舌で存分に楽しみたいなら「シェーブル・ドール」がお勧めだ。地中海生活のコンセプトの最高峰であることは、間違いない。



黄金の山羊の物語

フロントから見るとまるで中世の城のよう

ェーブル・ドールは、ユーゴスラビアの著名なバイオリニスト、ズラトゥコ・バロコービッチ(Zlatko Baloković)が1926年に購入した建物が核となっている。
 彼は、アメリカ副大統領スティーブンソンの姪ジョイス・ボーデンと結婚し、ニューヨークに住んでいた。
 その頃、スウェーデン王国のウイリアム王子は、父グスタフ5世とエズを訪れたときにこの地が気に入り、1923年にエズの海を見下ろす崖の真上に、離宮「シャトー・エザ」を設けた。今はこれが村のもう一軒のホテル「シャトー・エザ」なっている。
 そしてウイリアム王子と親交のあったバロコービッチ夫妻は、シャトーエザを訪れてその美しさに虜になったらしく、海に面した斜面にある眺めの良い建物を手に入れ、改装して別荘にした。彼はその別荘を「The Golden Goat」(黄金の山羊、フランス語でシェーブル・ドール)と呼び、活動拠点のニューヨークとエズ村とで交互に生活を送っていたという。



息を呑むような絶景が広がる、テラスのバー



奥にある喫茶スペースも最高の景色だ


 エズを訪れたバロコーヴッチが、金色の毛の山羊に導かれて進んで行くと、この建物に辿りついた、と伝えられている。かつて、このあたりの岩山では山羊が放牧されていた。実際、ホテル南面は山羊が遊ぶのにちょうど良い斜面になっている。南から逆光を浴びて金色に輝く、ヤギの神秘的な美しさに惹かれてついて行ったのだろう。

プライベート・ヴィラ感覚の楽園

 というのも、ホテルの改装時に、隠されていた金貨が見つかったという。元々貧しい農民が暮らしていた建物からどうして金貨が見つかったのか、それは恐らく飼っていた山羊から得られる高価なヤギ乳の売上金であるに違いない。
 バロコーヴッチは、故国に帰るときこの別荘を手放し、1953年、シェーヴル・ドールはレストランとして出発し、その評判から数室のプチホテルを開業した。

地中海をひとり占めできそうなテラス

 1980年代、新オーナーになってから、近くの建物を買い増して収容力を増し、ラグジュアリーホテルとして再出発した。モナコ王妃がたびたび食事に訪れ宿泊し、米国のクリントン大統領が著名人と訪れるなど、その名声を確かなものにしていった。
 その後も改装を重ねながら、現在34室の客室とレストラン3軒、テラスのカフェ、バー、サロン、プール、スパ、サウナ、ジム、マッサージ、庭園を擁する立派なホテルになった(2007.8現在の状況、約2年ごとに施設の見直しがある)。ホテル内だけで、じゅうぶん一日楽しめる。
 これだけ大規模になってもアットホームな感じを受けるのは、のどかな村の雰囲気やスタッフの心配りのためだけではない。大きな建物がなく、個々の施設や客室が、テーマパークさながらに村に溶け込むように点在しているためだろう。

シェーブル・ドールへの道

陽光に輝く黄金の山羊(シェーブル・ドール)

線道路に近いながらも、ホテルは村の城壁の内部にあり、フロントへ直接車を着けることはできない。タクシーにしても、レンタカーにしても、幹線道路から村に向って100メートルほど登った宿泊者専用駐車場の入口で下車することになる。地味な色使いではあるがくすんだ緑を基調にした大きな看板があるので分かる。ちょっとした事務室があり、ホテルマンが常駐しているので、荷物を預けると良い。後でわかったのだが、荷物は後でスタッフが人力で、必死の形相で遠路はるばる部屋まで運んできてくれる。その顔を見ると、不要不急の荷物は予め車の中に残しておいた方が良かったと思わされた。


細長い園地状のテラスにある噴水


海に一番開けた側の客室

 駐車場には、ジャガー、ポルシェなどの高級車が並んでおり、レンタカーなら少なくともアルファロメオクラスに乗っていきたい。

 ここからフロントまでは、通常は村の中の小道を観光客の波に混じって3分くらい登っていくのだが、宿泊者はブーゲンビリアやゼラニウムが咲き並ぶ敷地内の散歩道を、ホテルマン先導で移動するというVIP待遇だ。メインの建物の内部を通過して、ひょっこりフロント棟の前の村の小道に飛び出てくる。
 一般用の道を行く場合は、そのまま車道を進む。途中にある村の絵図でイメージをつかんでおくと良い。程なく城門が現われ、車道は終わる。その先は歩道となり、分岐のたびに左(海側)に進んでいく。ホテルは村の一番海側にあるので、迷うことはない。
 村内の道は全て歩行者専用、というのも階段が随所にある上、狭すぎて車は通れない。その小道がホテルの建物をトンネルのようにくぐって上の方に続いている。フロントはトンネル部分に面した目立たない扉の内側に設けられている。


上はテラスレストラン、下るとプールのあるテラス



海に吸い込まれるような乾いた斜面


 一歩足を踏み入れると、紛れもなく落ち着いた空間と、ホスピタリティー豊かな受付係が待っている。