  
				ディナーは、テラス・バーでのシャンパンで始まる
 
  
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エズでのディナーのスタートは、都会と違って早い。あたりが暗くなり始める頃には、大部分が日帰り客の村内は日中の喧騒が嘘のように静まりかえり、そのころレストランにゲストが集まり始める。 
 夕食用のレストランは3軒あり、それぞれ全く違った特徴を持っている。 
 メインレストラン「ラ・シェーブル・ドール(La Chèvre d'Or)」(営業時間12.30-14.00,19.30-22.00、営業期間3-11月、期間内無休ただし3月は水休)は、大胆な造形と色使いの華やかな料理が印象的なシェフ、フィリップ・ラベ(Philippe Labbé)率いるレストランで、盛装での入店が必要とされている(実際はそれほど厳しくない)。 
		 
			
				
				  
				全面ガラス張りを通して、テーブルに就きながらテラスに迫る夕暮れの変化を楽しむ
 
  
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 ラベは前任のシャトー・ドゥ・バニョール(Chateau de Bagnols)時代にも星を獲得しており、2003年にこのレストランの料理長に就任して、ミシュラン二つ星に引き上げた。フランスの料理専門誌「三ツ星(3 Etoiles)」の最新号(2007/2008冬号)でも、「太陽のシェフ」(Chefs du soleil)の1人として、10ページを裂いて紹介されている。 
		
			
				
				  
				ガラス窓の映り込みが強くなる頃には、黄昏も深まっている
 
  
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  一方、「ル・グリル・ドゥ・シャトー(Le Grill du Châteaux)」(営業時間12.00-14.00,19.00-22.00、営業期間2月後半-12月前半、無休)は、オーソドックスな料理を提供し、あくまで普通のフランス料理の範疇で上質を追求した、比較的親しみやすいレストランらしい店だ。 
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  皿を飾る品々は、料理というより食べる芸術作品と呼びたくなるもので、味、素材などの通常の視点とは全く違う食の世界を、垣間見ることができる。まさにフランス版懐石料理、と言えばぴったりだろう。 
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				もう一軒のカジュアルなレストラン「ル・グリル・ドゥ・シャトー」
 
  
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 もし新鮮な魚が食べたければ、ホテルのシーフードレストラン「ラ・ヴワール・ダジュール(La Voile d'Azur)」まで出かけると良い。近くの小さな町ヴィルフランシュ・シュル・メールの海岸沿いにある店までは、車で20分ほどかかる。 
		
			
				
				  
				レストランの様子。盛装のゲストもいれば、カジュアルにならぬよう気を使う程度のゲストもいる
 
  
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シェーブル・ドールにせっかく泊まったのであれば、一度は「ラ・シェーブル・ドール」に入ってみたい。盛装が原則だが、客がみな盛装なわけではなく、ジャケット、ワンピース着用など、一応カジュアルではないという程度の客も結構いるようだ。 
 予約の時間に行くと、レストランのテーブルではなく、まずはランチの時に使われるオープンテラスに案内される。暮れなずむ海の景色を眺めながら、食事前のひと時を過ごすのが、ここでの流儀だ。 
 一口サイズの可愛いアミューズブッシュを前に、山羊が黄金色のドン・ペリニョンの入ったカップを支えるオリジナルデザインのグラスを手に、期待を膨らませて待つ。 
		 
			
				
				 
				  
				黄昏のテラスでシャンパンとアミューズブッシュを
  
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  ホテルのブーランジェリーの香ばしいテーブルパンが、エクストラバージンオリーブオイルと共に出されるころには、外は漆黒の闇となり、ライトアップされた金色の山羊のモニュメントが浮かび上がる。 
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  やがて、レストランへのテーブルへ通され席に着く。外は日が落ちて、明るい青が徐々に暗くなリつつあるところだ。変わりゆく青の色調や、それに伴いだんだん明るくなる街の灯がの様子が、一面のガラス張りを通して手にとるようだ。 
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				ホテル内にパン工房を持つので、美味しさは専門店に引けを取らない
  
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				白身魚のカルパッチョ(最初のオードブル)
  
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コースを基本とするディナーの、ベーシックメニューは、前菜一皿目が白身魚のカルパッチョだ。新鮮で身の良く締まった透き通るような一片を、オリーブオイルでマリネしたものだ。香草とレモンがデザイン良く散りばめられて、皿の上の一枚の絵のようになっている。 
 続く前菜二皿目は、2種類の小品が2個ずつ四角い皿の四隅に配置された料理だった。 
		 
			
				
				 
				  
				小さなオードブル2種4品の盛り合わせ(二皿目のオードブル)
  
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  一つは、ケーキに見立てた料理で、スポンジ代わりの野菜か何かのペーストでジャム系の濃い味のペーストをサンドし、さらに上部にストロベリーゼリーを重ねた、菓子のような美しい品だ。 
 もう一つは正方形のパイ状の上に、酸味のきいたペーストをイチゴをくり貫いた器に入れたもの、アスパラガスのような柱、キイチゴをきれいに配置したものである。デザートと料理の中間のような、それでいて食べ手のある一皿だった。 
		
			
				
				 
				  
				野菜のグラタン、温野菜添え(三皿目のオードブル)
  
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 前菜三皿目も、凝った造りの料理だ。詳しくは思い出せないが、ポテト、ベーコンなどを組み合わせて作った容器にグラタンが入っているものだったかと思う。トマトと、ナス科野菜の一種だろうか、品のいい温野菜が添えられていた。 
 ここまでの皿とは違い、味的にも料理らしい、それも割と庶民的ななじみのある味であったが、暖色系のソースや野菜でカラフルに彩られていたのは共通している。 
		
			
				
				 
				  
				子羊フィレ肉のロースト、3種類の付け合せ添え(メイン)
  
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  いよいよメインの肉料理となる。肉は子羊のフィレ肉のロースト。 
 骨は飾りだろう。敷き詰められた、マルサラかブランデーか何かの肉汁ソースの上に直径約5cmの程よいレアローストの肉が置かれ、ソースのキノコで一杯に覆われている。 
 脇には、小さなサイの目切り野菜を丸く固めたもの、小さな野菜の容器に盛られた炒め物のムース掛け、黒トリュフのスライスが添えられている。 
		
			
				
				 
				  
				山の幸の炒め物、コンソメゼリー添え(メインの付け合せ一皿目)
  
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 メイン料理は、美味しくておなかを満たすという役割があるので、芸術的な色彩感は他の皿ほどではなくなっているが、見た目にも舌にも十分満足できる一品だ。 
 このときには既にかなり満腹になっていたのだが、付け合せとして別にさらに2皿が用意されていた。 
 付け合せの一皿目は、抽象画のような美しいものだった。棒状のコンソメゼリーに揚げたミントか何かの葉を3枚あしらったものを背景に、米、野菜、キノコなどから作った2つの小品をソースの線で結び、アクセントに小さなシメジを配したものだ。
  
		
			
				
				  
				チーズのフライ(メインの付け合せ二皿目)
  
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 そして付け合せの二皿目は、サイコロのような揚げチーズが3つ。 
 ひょっとするとデザートとしてのチーズの一部であったのかも知れないが、皿数が非常に多く間断なく運ばれてくるので、真相は分からない。 
 また、食事の分量としてもかなり多く、味覚も鈍くなりつつあり、いくら美味しいパンでもセーブしておくべきだったと後悔していた。しかし、さらに後が続くことを、この時はまだ知らなかった。
  
		
			
				
				 
				  
				お好みのチーズ盛り合わせ
  
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ようやく、デザートの部分にたどり着いた。まずは、チーズの番だ。20〜30種が載せられた大皿を前に、説明を聞きながら、二人で5品を選んだ。 
 恐らく産地や製法ごとに専門的に分類しているのであろう。どれも初めて聞く名前ばかりだったので思い出せないが、地元の山羊や羊のフレッシュチーズを中心にソフト系のチーズを味わった。 
		 
			
				
				  
				お好みのチーズ盛り合わせ(別の組合せ)
  
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 味の基調は、シェーブルとカマンベール、またはその間にあり、どれも好みに合っていたこともあり美味しかった。 
 アルプス南部の山のチーズは、生産量が少なく、門外不出ならぬ村外では味わえない、貴重なものがあるようだ。ここでの味わったチーズには、恐らく山がちなコートダジュール地方ならではのものなのだろう。 
		
			
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				お好みのデザート(イチゴのアイスクリーム) 
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  デザートは、フルーツ、アイスクリーム、タルト、チョコレートなど、一定の素材を組合せ、それぞれ銘々に全く違ったデザートとして出してくるのが面白い。一見、全く別のデザートのような感じだ。 
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				お好みのデザート(ボイズンベリーのタルト) 
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				お好みのデザート(アイスクリームのボイズンベリー添え) 
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				カシスのパラソル型アイスキャンデー
  
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 最後に、金粉と紛糖で飾ったパラソル型のカシスのアイスキャンデーで、このディナーコースも終わりを迎える。 
 黒い板に載せる、和菓子を意識したデコレーションにセンスが感じられる。 
 シェフ・パティシエのセドリック・カンパネラ(Cedric Campanella)のアイディアもまた、印象的に残るものだった。 
		
			
				
				  
				夜も更けたテラスに輝く黄金の山羊
  
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 終わることのない楽しい時間を象徴するかのように、黄金の山羊は、真っ暗なテラスの中で一段と輝きを増している。
  
 余力があれば、素晴らしいディナーの余韻をバーやサロンで楽しんでいたい。 		 |