フロントから見るとまるで中世の城のよう
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シェーブル・ドールは、ユーゴスラビアの著名なバイオリニスト、ズラトゥコ・バロコービッチ(Zlatko Baloković)が1926年に購入した建物が核となっている。
彼は、アメリカ副大統領スティーブンソンの姪ジョイス・ボーデンと結婚し、ニューヨークに住んでいた。
その頃、スウェーデン王国のウイリアム王子は、父グスタフ5世とエズを訪れたときにこの地が気に入り、1923年にエズの海を見下ろす崖の真上に、離宮「シャトー・エザ」を設けた。今はこれが村のもう一軒のホテル「シャトー・エザ」なっている。 そしてウイリアム王子と親交のあったバロコービッチ夫妻は、シャトーエザを訪れてその美しさに虜になったらしく、海に面した斜面にある眺めの良い建物を手に入れ、改装して別荘にした。彼はその別荘を「The Golden Goat」(黄金の山羊、フランス語でシェーブル・ドール)と呼び、活動拠点のニューヨークとエズ村とで交互に生活を送っていたという。
息を呑むような絶景が広がる、テラスのバー
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奥にある喫茶スペースも最高の景色だ
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エズを訪れたバロコーヴッチが、金色の毛の山羊に導かれて進んで行くと、この建物に辿りついた、と伝えられている。かつて、このあたりの岩山では山羊が放牧されていた。実際、ホテル南面は山羊が遊ぶのにちょうど良い斜面になっている。南から逆光を浴びて金色に輝く、ヤギの神秘的な美しさに惹かれてついて行ったのだろう。
プライベート・ヴィラ感覚の楽園
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というのも、ホテルの改装時に、隠されていた金貨が見つかったという。元々貧しい農民が暮らしていた建物からどうして金貨が見つかったのか、それは恐らく飼っていた山羊から得られる高価なヤギ乳の売上金であるに違いない。
バロコーヴッチは、故国に帰るときこの別荘を手放し、1953年、シェーヴル・ドールはレストランとして出発し、その評判から数室のプチホテルを開業した。
地中海をひとり占めできそうなテラス
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1980年代、新オーナーになってから、近くの建物を買い増して収容力を増し、ラグジュアリーホテルとして再出発した。モナコ王妃がたびたび食事に訪れ宿泊し、米国のクリントン大統領が著名人と訪れるなど、その名声を確かなものにしていった。
その後も改装を重ねながら、現在34室の客室とレストラン3軒、テラスのカフェ、バー、サロン、プール、スパ、サウナ、ジム、マッサージ、庭園を擁する立派なホテルになった(2007.8現在の状況、約2年ごとに施設の見直しがある)。ホテル内だけで、じゅうぶん一日楽しめる。
これだけ大規模になってもアットホームな感じを受けるのは、のどかな村の雰囲気やスタッフの心配りのためだけではない。大きな建物がなく、個々の施設や客室が、テーマパークさながらに村に溶け込むように点在しているためだろう。
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